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200万会員のリアル店舗・ECサイトの顧客データをCRMで集約
統合されたデータを利活用して“感動”を提供する接客サービスを創造

流通・サービス業

流通・サービス業アパレル業 株式会社キャン様

掲載日:2024年06月28日

導入ポイント

  • 課題
    ●リアル店舗とECサイトで顧客データが分散しており、データ利活用が困難
    ●CRMツールでデータ統合を図るにあたり、ツールの安定性・信頼性が必須条件
  • 評価ポイント
    ●アパレル業界の実績が豊富なクオリカによる、安定したサービス品質
    ●CRM機能を単独で利用でき、小回りが利くツール
    ●カスタマイズで対応する機能の一部は、標準機能として組み込む“フェア”な開発方針
  • 効果
    ●CRMとPOS端末・ECサイトがリアルタイムに連携し顧客サービスを向上
    ●統合データを分析し“感動”を提供する接客サービスの開発が可能に

課題

販売チャネルごとに分散管理された顧客データの一元化を目指す

 キャンは、多くの女性から支持を集める「Samansa Mos2(サマンサ モスモス)」をはじめ、“ナチュラルスタイル”をベースとした11ブランドを展開するアパレル企業です。約450店舗と自社ECサイトを通じて、全国のファンに商品を提供しています。2024年に創立60周年の節目を迎えた、業界内で特に長い歴史を持つ会社でもあります。
キャンが掲げる理念「Customer Delight!」について、執行役員の太田晴康氏はこう説明します。「この言葉には、お客様に“満足”のさらに上を行く“感動(Delight)”をご提供したいという想いを込めています。当社は創業以来、店舗での心を込めた接客を最も大切にしてきました。店舗スタッフとの会話を楽しんでいただいたり、その空間でくつろいでいただくことを大きな目標としています」。
 キャンは2010年代半ばから、店舗およびECサイトでの心地よい接客サービスを強化するため、データを利活用することを構想。そのためには、分散管理されている顧客情報・ポイント情報など、顧客データを統合管理する必要がありました。そこでまず、2017年に店舗とECサイトのポイント情報を一元化し、約200万人いる会員はどちらのチャネルで購入しても共通のポイントが還元されるようになりました。
これに続いて取り組んだのが、店舗とECサイトの購買履歴の一元化でした。「別々のデータベースで管理していたものをひとつのデータ統合基盤に集約。さらに、お名前・住所などの属性情報、保有ポイント情報、会員ステージ情報を合わせて管理し、分析ソースとして活用可能にすることを目指しました」(太田氏)。
 この基盤の構築にあたって、キャンはあるCRMツールを試験的に導入しましたが、満足には至らなかったと太田氏は振り返ります。「トラブルに対する問い合わせへのレスポンスが遅い点や、データ利活用に関する提案が少ない点など、ベンダーの技術面・体制面に不安がありました。お客様サービスの品質を左右する重要なツールとなるため、より信頼性の高い製品の導入を検討することとしました」。

 

選定

ツールの安定感と柔軟性、パートナーとしての“フェア”な開発方針を評価してクオリカを選定

 新たなCRMツール導入に向け、キャンがパートナーに求めた条件を太田氏はこう説明します。「当時はまだ、データを集約した後、それを具体的にどう利活用するか、デジタル戦略が十分に練れていない状況でした。そこで、小売業の中でも特殊なアパレル業界での知見・経験を持つ会社にパートナーになってもらい、データ利活用のアドバイスをしてほしいという思いがありました」。
 クオリカには、数年前にマーチャンダイザー業務を支援するシステムをキャンに導入した実績から、提案参加を打診しました。そしてクオリカからは、小売専門店向けソリューション「SpecialtyQube Growth」のCRM機能を軸とした提案が行われました。
 各社の提案を比較検討した結果、クオリカはアパレル業界での十分な実績・知見があることに加えて、多くの優位性があったと太田氏は説明します。「まず、ツールの安定感が期待できたことです。お客様へのサービス品質に影響しないよう、CRMツールの安定稼働は選定の大前提でした。クオリカは、事業規模の大きさ、大規模案件の実績から、高い品質が担保できるベンダーであると判断しました」。
 2番目の評価ポイントは、「SpecialtyQube Growth」は、小回りが利くツールであること。「もともと当社は、大がかりな仕組みをつくる意向はなく、専門小売に強い小回りが利く単体のCRMツールを探していました。CRM以外の領域までカバーする巨大なシステムを導入した場合、部分的な機能変更を加えにくくなることがあります。『SpecialtyQube Growth』のCRM機能は、コンパクトなツールとして利用でき、他のツールやアプリと柔軟な組み合わせができる点が、当社が求める条件に最もフィットしていました」(太田氏)。
 そして3番目は、クオリカの“フェア”な開発方針への共感でした。「クオリカからの提案時、カスタマイズで機能を加える場合に、他の会社で需要が見込める機能があれば標準機能としてパッケージに取り込むという方針が示されました。それは結果的に、当社のコスト負荷軽減につながります。そのような提案をしてくれるベンダーは聞いたことがなく、ビジネスパートナーとして長く付きあっていけるフェアな会社だと感じました」。
 こうした総合的な評価により、クオリカがパートナーとして最も信頼できる会社であると判断。「SpecialtyQube Growth」のCRM機能を利用して、顧客データ統合基盤を構築することを正式決定しました。

株式会社キャン
執行役員
経営統括本部長 兼 業務企画部長
太田晴康 氏

導入と成果

ベンダーが異なるPOS端末やECサイトとの間で、
円滑なリアルタイム連携を実現

 今回、「SpecialtyQube Growth」のCRM機能で構築する顧客データ統合基盤の役割は、まず店舗POSとECサイトの購買履歴をリアルタイムで集約し、分析可能なデータとして管理すること。加えて、会員の基本情報や保有ポイント数、会員ステージの情報なども一人ひとりに紐づけて管理すること。またこの基盤は、店舗での商品購入の際は、POSレジが最新の保有ポイント数・会員ステージ情報をリアルタイムで取得するための、ポイントサービスの要となります。
 しかし、ここで課題となったのが、提供ベンダーが異なるCRM、POSレジ、ECサイト間での円滑な情報連携の実現でした。「CRMはクオリカが提供、既存のPOSレジとECシステムはそれぞれ別のベンダーが提供する製品です。システムの仕様の違いという課題と、ネットワークの遅延を防ぐという課題をクリアする必要があり、リアルタイムに連携させるには高いハードルが予想されました」(太田氏)。
 クオリカの開発基盤チームは、豊富な知見を活用して、システム間を連携させる開発を実施。トラブル事象が発生する可能性を徹底的に排除し、目標の品質を達成することに成功しました。太田氏はクオリカの技術力をこう評価します。「このシステム間連携に加えて、既存データベースからのデータ移行でも、技術力の高さが印象的でした。データベースの切り替えでは、暗号化された会員パスワードの移行方法が課題となりますが、クオリカのノウハウによって問題なくデータ移行が完了しました」。
 この顧客データ統合基盤を利用することで、マーケティング施策の可能性も広がるだろうと太田氏は期待を口にします。「たとえば購入頻度が高いお客様にDMを送るといったケース。現在は、週次や月次のバッチ処理で、対象の会員ステージに該当するお客様を抽出しています。今後はBIツールを利用して、リアルタイムの会員ステージ情報に基づき対象の方を抽出することで、より大きな販促効果につながると考えています」(太田氏)。

今後の展開

統合されたデータを分析・利活用して
“感動”を提供する新サービスの創造を目指す

 こうして、「SpecialtyQube Growth」のCRM機能を利用して、顧客データ統合基盤が完成。キャンのデジタル戦略は、次のフェーズとなる、本格的なデータ利活用へと大きく前進しました。「当社では、売上拡大のようなマーケティング目的よりも、お客様へ“感動”を提供するサービスのために、データを利活用していきたいと考えています」(太田氏)。そのため、2023年はほぼ1年をかけて、お客様へのインタビューやアンケートで「何が望まれているのか」を確認するとともに、各部門からデータ利活用DXの意見を出しあう社内プロジェクトを実施しました。「この準備期間で、当社らしいデータ利活用の方針が固まりました。これから、クオリカと協力してかたちにしていく計画です」(太田氏)。
 既に取り組んでいるテーマのひとつが、接客時に使用するタブレット端末用ツールの開発。「お客様がこれまで購入された商品を、テキストではなく写真をメインとして一覧表示する、視覚的なUIを目指しています。店舗スタッフはお客様と同じ画面を見ながら、おすすめ商品やコーディネートをアドバイスするというもの。ご自宅のクローゼットの中の服を一緒に見ているような感覚で、自然な接客ができるツールにしたいと考えています」(太田氏)。
 また、キャンならではの個性的なデータ利活用として、お客様の気持ちを最優先した接客スタイルの実現があります。「お客様によっては、商品を選ぶ際にお声がけしてほしくない方もいらっしゃいます。最初はお声がけを控えるところからスタートし、段階を踏んで、会話を楽しんでいただく距離の近い関係へと発展させていく。このお客様ファーストの接客を実現するため、まず“声をかけてほしくないお客様”に共通するカスタマージャーニーの分析をクオリカと一緒にトライしています」(太田氏)。
 最後に太田氏は、クオリカへの期待をこう口にします。「当社のデジタル戦略は、ここからがようやく本番です。クオリカは、CRMツールを提供するベンダーという関係にとどまらず、お客様に向けたよりよいサービスを創造するためのパートナーであり続けてほしいと思っています」。
 また、近い将来のPOSレジ端末のリニューアルにあたっても、クオリカに対する期待が大きいと太田氏は言います。「クオリカはタブレットPOSの実績も豊富ですし、当然パートナー候補の一社になるでしょう。もし、CRMとPOSの両方がクオリカの提供になれば、より円滑なデータ連携で、お客様サービスの向上につながる可能性もあります。今後もクオリカと協力して、『Customer Delight!』を目指していきたいと思います」(太田氏)。


クオリカ社員と一緒に

お客様のプロフィール

会社名
株式会社キャン
https://www.can-jp.com/
所在地
(本社)岡山県岡山市北区幸町2-8
(東京本部)東京都江東区大島2丁目2番1号 7階
設立
1964年4月
資本金
5,000万円
事業内容
衣料品および雑貨類の、企画から製造・物流・販売までをトータルで手がける。レディース向けを中心とした、ナチュラル感やぬくもりを感じられる商品づくりが人気を博し、幅広い年齢層から支持されている。代表ブランドに「Samansa Mos2 (サマンサ モスモス)」「Te chichi(テチチ)」など。

お問い合わせ先:サービスクリエーション事業部小売ビジネス部
TEL:03-5937-0760
FAX:03-5937-0803