ホーム導入事例ナブテスコ株式会社

KOM-MICSを使った改善により加工時間を短縮
加工設備の工具交換を計画的に行い設備停止時間の撲滅も視野に

製造業

製造業 ナブテスコ株式会社様

掲載日:2023年12月21日

導入ポイント

  • 課題
    ●加工設備の稼働状況は確認できていたが、改善が思うように進まない
    ●以前のシステムを改善に活用するには、自社でプログラムを作りこむ必要があった
  • 選定
    ●KOM-MICSは必要な機能が全て備わっており、細部まで解析可能
    ●効率化プログラムを自動生成する機能により生産性改善が期待できる
  • 効果
    ●高い解析力と高効率プログラムの導入で加工時間を短縮
    ●工具寿命の一元管理、工具交換に伴う設備停止の要因分析を行い、管理工数を削減

課題

加工時間短縮による生産性改善

 2003年、帝人製機とナブコが合併して発足した会社がナブテスコです。油圧技術を用いたパワーショベル用の走行ユニットとコントロールバルブ、産業用ロボットの関節に使われる精密減速機、新幹線のブレーキシステムや自動ドア、航空機の機体の飛行姿勢を制御するフライト・コントロール・アクチュエーション・システムなどを提供し、いずれも高いシェアを誇っています。今回KOM-MICSを導入した同社の垂井工場(岐阜県)は、パワーコントロールカンパニーに所属しており、主に建設機械向け油圧機器の設計・製造を行っています。製造エリアでは、加工・組立・検査・塗装を実施しており、その後、お客様へ製品を提供しています。
 そうした中、工場で取り組む課題は、各種部品の加工時間を短縮させ、生産性を改善させていくことです。そのため、同社では以前、加工設備の稼働状況を収集するシステムで、改善活動を試みました。「しかし、そのシステムは全体の稼働状況を見ることには適していましたが、例えば、切削工具の刃先に加わる加工負荷の値が作業中にどう変化しているのかなど、細部を掘り下げて解析する能力はありませんでした」と、同社パワーコントロールカンパニー垂井工場製造部製造技術課の中村憲和課長は話します。
 加えて、システム側で作業を改善する機能を実装するには、自らプログラムを作り込む必要がありました。当時はその開発に時間や知恵を注ぐ余力がなかったと言います。「結局、細部の加工負荷状況が分からず、担当者がトライ&エラーを繰り返し、時間をかけて改善を進めるしか方法が無く、思うように活動が進まない状況に、もっと効率的にできるような方法はないかと模索していました。」(中村氏)。

 

選定

目視や音、振動、経験、勘に頼る運用に限界
定量データを見える化し、改善が可能なKOM-MICSを採用へ

 そこで導入を検討したのが、工場の生産性改善システム「KOM-MICS」です。当初は同システムを開発したコマツ様から貸与され、工場の加工設備に取り付けて試運用することから始めました。
 これまでは、カタログ値を参考にNCプログラムを設定して加工設備による加工を進めていますが、必ずしもカタログ値が正しいとは限らず、治具や工具、加工物の状態や条件によって最適な設定値が決まるというのが実情です。「そのため、加工担当者が調整しますが、その時に頼るのが、経験と勘、コツやノウハウです。従来は、加工設備から出る音や振動なども参考にしてアナログな手法で設定値を決めていました」と、製造部製造技術課の吉村仁志氏は言います。
 それに対し、KOM-MICSを用いれば、切削工具の加工負荷などの定量データを“見える化”できます。「そのデータを活用することで、目視や音、振動、経験や勘などの人の感覚だけではなく、“データ”によって改善のポテンシャルがどれほどあるかが分かり、その改善を実践することで、効率的に効果を上げていくことが可能になります。KOM-MICSは100種類以上のアプリが実装され、その中にはデータを基に改善をアシストするアプリもあり、まさに私たちが欲しいと思っていた機能が全て備わっているシステムだと確信しました」(吉村氏)。
 実際、試運用では、切削工具が加工物に接触するまでの削っていない時間「エアカット」の短縮に挑み、加工時間の短縮に成功。「試運用の段階で効果が分かり、KOM-MICSの本格的な導入を決断しました」(中村氏)。

右から ナブテスコ株式会社 パワーコントロールカンパニー 垂井工場
製造部製造技術課 課長 中村憲和 氏
製造部製造技術課 塙裕樹 氏
製造部製造技術課 吉村仁志 氏

導入・成果

KOM-MICSの導入で加工時間を短縮
工具寿命の管理機能で加工設備の停止ロス削減

 本格的に活用するフェーズに移り、KOM-MICSの提供ベンダーとして導入支援を行ったのがクオリカです。最初は数台を導入し、その後、他の加工設備にも横展開するため追加導入。現在は工場内の加工設備のうち、約半分の設備にKOM-MICSを設置しています。データはクラウド上に収集し、どこからでも確認できるため、現場に行くことなく加工設備の稼働状況を遠隔で監視できます。
 設置されたKOM-MICSは早速様々な成果を出しています。「例えば、複数の加工設備で同一品番を加工していても、加工時間が速かったり遅かったりと、異なるケースがあります。そうした際、KOM-MICSでは、各機の切削力(加工負荷)を測定。その結果を基に、アプリを使って切削力が目標値(最大値)で一律となるように加工条件を変更したNCプログラムを自動作成できます。そのプログラムを該当する複数機に入力すれば、全機が目標値で切削でき、加工時間の短縮が実現できます」と、製造部製造技術課の塙裕樹氏は説明します。その他、加工負荷のデータを徹底的にマークし、課題が見つかれば現場と話し合って加工プログラムを変更する対処をしています。客観的な数値データがあるため、現場も納得感を持って積極的に改善する機運が生まれています。「結果、目標加工時間を達成できました」(塙氏)。
 一方で工具管理の観点では、リアルタイムで使用状況と交換時期をKOM-MICSで集計できる点もメリットだと考えています。「以前は現場の加工設備まで足を運び、交換時期を確認していました。ただ、全てをチェックできず、気付かないところで工具寿命に到達し、自動運転が止まることも。無人帯で設備が停止した時は、朝まで気付けないケースもありました。その点、今は一覧表で、『本日交換』『明後日交換』と事前に把握でき、交換の準備が計画的に行えます。加工設備の突然の停止と作業者の確認の手間がなくなり、生産性の向上に寄与しています」(中村氏)。
 異常が発生して加工設備が止まった場合、稼働状況のログが記録されているため、原因がデータによって明らかになることも利点です。「これまでは現場から口頭で状況の説明がありましたが、内容に齟齬があった場合に、確かな要因がつかめず復旧が遅れるケースも見られました。それがデータで正確に示されることにより、設備停止の要因を特定し修理するスピードが速くなったと感じています」(塙氏)。

機械に設置されたKOM-MICS Logger

今後の展開

加工設備を移設する際に安定稼働の確認に活用
生産性の改善にとどまらず省エネ活動へも展開

 同工場では、独自のKOM-MICSの活用も進めています。そのひとつが、加工設備を移設した際に、KOM-MICSが示す切削力波形を確認することです。移設前と波形が変わっていなければこれまでと同等の状態で加工できているということ。万が一変化があれば、加工設備の微妙な傾きなどの原因を特定して、修繕する必要があります。現在、同工場では既存工場を取り壊し、新工場を建設する工事を3期に分けて進めています。工場の取り壊しのため加工設備を他の施設に移設したり、工事が完了したエリアに戻したりする作業を行っており、このプロセスの中でKOM-MICSが安定稼働の確認に大きく貢献しています。さらに、仮に移設中にNCプログラムのデータが消去されてしまった場合でも、KOM-MICSにバックアップデータが保存されているため安心です。
  今後は、電力の見える化にも役立てていく考えです。工場内の分電盤から取得する消費電力データとKOM-MICSから取得する稼働状況データを照合し、改善による加工時間の短縮や、加工設備の稼働・非稼働がどの程度電力消費に影響しているのかを分析し、監視する計画です。「その実現により、生産性の改善にとどまらず工場全体の省エネ化も図っていきたい」(中村氏)と同社では構想しています。

導入を担当したクオリカ社員と一緒に

お客様のプロフィール

会社名
ナブテスコ株式会社
所在地
東京都千代田区平河町2丁目7番9号 JA共済ビル
創立
2003年9月29日
資本金
100億円
事業内容
精密減速機(産業用ロボット用)、油圧機器(油圧ショベル用)、鉄道機器(ブレーキシステム)、航空機器、自動ドアなどを開発、提供。連結子会社は国内14社、海外50社。(2022年12月末時点)

サービス・ソリューション

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