製造業 大久保歯車工業株式会社様
導入ポイント
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課題●コストダウンをシビアに要求される中、ビデオ観察による工作機械の現状把握や分析は時間がかかり過ぎる
●様々な分析データを抽出、作成するのに一苦労していた -
選定●どのメーカーの工作機械にも後付けでき、稼働状況の見える化が可能
●改善点を導ける様々なアプリが付属し、生産性向上の突破口になる -
効果●工作機械のパレート図なども簡単に表示でき、現状把握や分析に貢献
●稼働状況や工具寿命管理のデータ収集、改善点の発見が格段に簡易化
課題
ビデオ観察による生産性向上活動が非効率
より手軽に現状把握・分析する手法を模索
大久保歯車工業は、歯車関連製品のリーディングカンパニーです。単体の歯車に加え、部品をアッセンブリーしたアクスル(車軸)、減速機、ATC(工作機械の自動工具交換装置)などを建設機械、産業機械やトラックメーカー、工作機械メーカー向けに供給。得意先は国内ではコマツや加藤製作所、三菱重工業、三菱ふそうトラック・バス、牧野フライス製作所など、海外では米キャタピラー、スウェーデンのエピロクといった大手が占め、グローバルに事業を展開しています。
そうした中、メーカーの宿命として常にシビアに要求されるのが生産性向上とコスト削減です。同社でも切削や研削などを行って各種部品を生産する工作機械に対し、生産性向上活動を行ってきました。その中心的な取り組みの一つが、ターゲットとなる任意の製品を工作機械が作る過程をビデオ撮影し、その映像を分析して改善点を探る手法です。ただ、その方法には多くの問題があったと、同社生産技術部機器生産技術課の石川幸男課長は言います。「工作機械では様々な製品を作っており、任意の製品の生産計画を掴み、現場の作業者と撮影の調整をするのに手間が掛かります。また、最近の設備はスプラッシュカバーで機械全体が覆われているため、ビデオカメラによる撮影が簡単ではなく、内部を覗ける窓も切削液で曇ってしまうなど、設備内の加工中の動きを詳細に観察することは難しい状況でした」(石川氏)。どうにか撮影できたとしても、「切削中に発生するびびり(振動)など異常な状態はないか」「どのような軌跡で加工しているのか」「数ある切削工具の中で一番加工時間の長いものはどれか」など、分析や現在の切削条件の妥当性を判断するのに多くの時間を費やしてしまっていたそうです。こうした様々な要因によって改善活動は遅々として進まず、長年にわたり、同社を悩ませてきたのです。
選定
いつでも知りたいデータを引き出せる点を評価
どのメーカーの工作機械にもつなげる魅力
同社では改善活動にメスを入れるため、様々なアプローチを検討しました。例えば、市場には稼働データを計測するセンサーを内蔵した新しい工作機械もあり、導入することで解決を図る方法もあります。ただし、同社は優れた工作機械であれば同一メーカーにこだわらず導入します。その結果、メーカーが異なると内臓センサーが取得したデータの互換性がなくなり、分析が困難なことから、それが選択肢になることは考えにくい状況でした。
そんな中、同社の目に留まったのが、クオリカが提供する工場の生産性向上システム「KOM-MICS ※1」(コムミックス)です。採用に至ったポイントを、生産技術部機器生産技術課の木村高志氏はこう話します。「Kom-micsは、本体の端末を工作機械のNCコントローラ(数値制御を行う付属装置)に接続するだけで、稼働状況のデータを常時取得してクラウドに貯め続けることができます。製品の品番を打ち込んで検索すれば、いつ、どのくらいの時間で作られ、出来高は何個で、切削力はどの程度だったかなどが一目瞭然で分かるのが利点です。これは、従来のビデオ観察とは全く異なり、端末さえ付けておけば、知りたい時に知りたいデータを引き出せるわけで、従来、分析に費やしてきた時間を削減でき、その分を改善業務に充てることができます。まさに我々が長年苦労してきた業務を解決できるツールであると感じました」。
さらに、着目したのが、どのメーカーの工作機械でも簡単に接続できる点だと言います。「様々なメーカーのものを使っている当社にとっては優位点。また、収集したそれらのデータは、現場に行くことなく、パソコンの一つの画面で一元的に確認できるのも評価した点です」(木村氏)。こうして多くのメリットを実感した同社は、Kom-micsの導入を決断し、工場のIoT化に向けて舵を切ったのです。
※1:KOM-MICSは株式会社小松製作所の登録商標です。
Kom-mics コンセプト
導入と成果
Kom-micsがグラフを自動生成し可視化を容易に
改善案も自動算出し加工時間短縮をサポート
Kom-mics導入後、長年改善活動に携わってきた木村氏が操作をする中で「鳥肌が立つような思い」をしたことが何度かあります。一つは、工作機械の稼働状況を把握する上で必要なグラフを、Kom-micsが自動的に作ってくれることです。「製造現場の分析に欠かせないパレート図などもイメージ通りに表示してくれます。ボタン一つでExcelにデータを取り込むこともでき、今まで欲しいと思っても見ることが難しかった様々なデータのグラフが、いとも簡単に確認でき、分析者にとっては胸が躍るような瞬間でした」(木村氏)。
さらに、木村氏が驚いたのが、そうして稼働状況を分かりやすく可視化するだけでなく、Kom-micsが改善案も提案してくれること。「例えば、工作機械が金属を加工する時、工具の回転数や削る取り代など切削条件によって切削力(切削抵抗)が最大化されたり、低くなったりすることがあります。その際、Kom-micsの『切削抵抗一定化』のアプリを使うと、ボタンを押すだけで、低い部分の条件も最大値に合わせて底上げして一定化する改善提案(シミュレーション)を自動的に行ってくれるのです。後は、作業者がその提案を見て妥当と判断すれば、Kom-micsが自動的にシミュレーション結果のNCプログラムを作成してくれます。こうして切削力が最大化できれば、加工時間の短縮も可能になるわけです。これも分析者には本当に有難い機能。今では、最初の取っ掛かりとしてまずは“一定化をやってみよう”というのが定番になっています」(木村氏)。
一方、生産技術部だけでなく、実際に工作機械を操作する現場の監督者にとっても、Kom-micsが日々蓄積するデータは重宝されているそうです。「パソコンを開けば、どの機械がどの程度動いて、どのくらい止まっていたか、先週の稼働率はどうだったのかがひと目で分かります。以前は知るのが難しかったエアーカット(切削せずに無駄に空転している時間)も分かり、見直すことで加工時間が短縮できます。現場では今まで機械の動作をスプラッシュカバーの窓越しに確認して、切削音を聞くなど五感に頼って条件を設定していたのに対し、こうやってソフトで監視し、管理できるようになったことの意義は大きいと考えています」(木村氏・田中氏)。
今後の展開
新たに工具寿命管理も行いコスト圧縮を図る
Kom-micsが与えてくれる切り口を徹底活用
生産性向上が端緒につく中、同社ではもう一つの改善活動が動き出そうとしています。それが、Kom-micsを活用した工具寿命管理です。従来は、作業者が出来高を記録し、「何個加工したら工具(チップ)を交換する」など個数ベースで寿命管理を行っていました。しかし、製品によっては同一工具であっても切削時間は異なり、単純な個数ベースの管理では誤差が出てしまうのが実情です。「実際、捨てられた使用済みのチップを見ると、まだ使えそうなものが一杯ある状態でした」(木村氏)。
そこで、検討しているのがKom-micsの工具寿命管理機能を使って、個数ではなく、切削した長さ(距離)をデータとして蓄積し、閾値(しきい値)を設けて交換時期を管理する方法です。「チップは10枚入り数千円と決して安くなく、そうした補助材料費のコストは関連部署だけで月百万円前後になります。長さの閾値を正確に割り出して設定できれば、補助材料費の圧縮効果はかなり出るでしょう」(木村氏)。今はデータ取りをしている段階であり、近い将来本稼働する予定。また、Kom-micsの新機能である予防保全機能も新たに稼働させる計画です。「1台でこれだけの機能があるツールは珍しい。Kom-micsが与えてくれる切り口を徹底活用し、改善活動を進めていきたい」と、木村氏は意気込みを語ります。
また、今後はさらにKom-micsを2台追加導入する予定であり、「改善活動や管理の幅を広げていきたい」と、機器製造部次長兼工作課の佐藤宏美課長は話しています。
導入を担当したクオリカ社員と一緒に
お客様のプロフィール
- 会社名
- 大久保歯車工業株式会社
- 所在地
- 神奈川県厚木市上依知3030番地(本社厚木第一工場)
- 創立
- 1938年(昭和13年)2月11日
- 資本金
- 1億円
- 事業内容
- 建設機械・産業機械・工作機械及びトラックの主要部品である各種歯車、アクスル、減速機、ATCなどを開発、製造販売。国内外の大手メーカーと取引し、売上高169億円(2021年度)、従業員数478名。
サービス・ソリューション
ニュースリリース
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2024.05.08
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2024.01.30
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2023.12.21
お問い合わせ先:ビジネスイノベーション事業部
TEL:03-5937-0777
FAX:03-5937-0802