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PITT Qube導入でCDで配布していたパーツカタログをWebシステムに刷新

製造業

自動車メーカー 日野自動車株式会社様

掲載日:2018年10月15日

導入ポイント

  • 課題
    ・パーツカタログをCDで配布していたため、データの更新が60日に1回であった。またメーカーはCD制作のコスト、ユーザーは毎回数十分かけて更新する手間がかかる
    ・出荷後の部品交換など、各車種のカスタマイズ情報が記載できず、共有できない
    ・整備解説書などその他資料との連携がなく、国内外の販売会社、代理店から要望が寄せられた
  • 目標
    ・Web化によって更新頻度を高め、常に最新の部品データを提供する体制を作り上げる
    ・短期の開発による稼働を目指し、従来のカタログデータを最大限活用しコアとなる検索画面などは現行を踏襲しつつ、複数あったシステムのインターフェースを統一して使い勝手を大幅に改善する
    ・単にパーツカタログのWeb化を図るだけでなく、将来的な「予防整備」を見据えたポテンシャルの高いシステムを構築する
  • 成果
    ・国内1カ所、海外3カ所のデータセンターにWebシステムを構築し、国内の販売会社・部品商から海外のデポ・代理店・ディーラーに至る全世界のユーザーに対して、遅滞なく最新カタログデータを提供
    ・メモ機能の付加により、出荷後の車両カスタマイズ情報をユーザーが掲載することが可能になり、部品検索を効率化。顧客情報を記載するユーザー独自の使い方で“成長するカタログ”に進化
    ・複数システムの統合によって操作性が向上するとともに、現行システムと比べても遜色のない画面応答速度でユーザーからの高評価を獲得

導入企業の概要

大型・中型トラックで45年連続国内トップ
お客様のビジネスを支援するトータルサポートに注力

 大型・中型トラックの国内シェアが35%を超え、45年連続トップを続ける商用車メーカーが日野自動車です。海外においても、東南アジアやオセアニアでトップシェアを争うほか、北米や中南米など世界の各市場でも事業を拡大しています。また、25年以上にわたるハイブリッド技術開発やそれをベースにした小型EVバスの実用化、ドライバーの異常発生時に乗客が非常ボタンを押すと減速、停止するシステム(EDSS)、衝突回避を支援するプリクラッシュセーフティシステム、わき見など前方不注意を検知すると警報を発するドライバーモニターといった先進安全技術を積極的に導入するなど、環境・安全技術で商用車業界をリードしています。

低燃費エンジンと先端の安全性能を備えた日野自動車の最新トラック「日野プロフィア」

 一方、近年はとくに、自動車の製造・販売のみならず、車両がお客様のもとでしっかりと働き続けるための “トータルサポート”にも力を入れています。「もっと、はたらくトラック・バス」をスローガンに掲げ、トラック・バスのアップタイム(稼働率)の最大化やライフサイクルコストの最小化などによって顧客価値を増大し、他社と差別化を図ることを狙っています。

 さらに、新たな領域にも挑戦。その一つが少子高齢化やeコマースの拡大によるドライバー不足が問題となる中、物流や交通の未来像を見据えた新たな取り組みによって、顧客価値に貢献することです。ネットワークでお客様と社会をつなぐことにより、お客様そして社会に必要とされ続ける存在であり続けることを目指しています。

PITT Qube導入の経緯

CDのパーツカタログでは最新データが提供できない
出荷後にカスタマイズされた部品を調べにくい問題も

 トータルサポートに注力する中、課題となっていたのが、販売会社(販社)や整備工場がトラックやバスの修理・整備に必要な部品を調べる際に使う電子パーツカタログでした。従来は、2カ月に一度、その時点での部品データを収録したCDを作成し、全国に配達。しかし、日野自動車側ではCDを作るための時間とコストがかかり、販社側ではCD到着時に毎回数十分かけてデータを更新することが手間となっていました。

 そして、何より問題だったのが、データが「最新でない」ことです。「CD作成や配達による長いリードタイムのため、販社に届いた時には、言ってみれば古新聞が届くようなもの。トラックの出荷後に品番が変更になった場合、データに反映されておらず、検索しても見つからないなどの問題も発生していた」と、日野自動車TS技術部パーツカタロググループの杉村康夫グループ長は振り返ります。

 加えて、出荷後に重要情報が後付けできない点も問題でした。トラックは購入したオーナーがバンパーをメッキ製に付け替えるなど、販売後にカスタマイズされることが多いのが特徴です。しかし、該当車種のページにはカスタマイズされた部品は記載されておらず、調べるのが困難な状況だったのです。また、整備解説書など各種技術資料とパーツカタログが連携していないため、国内販社や海外代理店からの指摘・要望が多く寄せられるという厳しい現実も突き付けられていました。そこで、こうした様々な問題を解決するため、次期システムの導入を検討し始めたのです。

システム導入の経緯

着目したのはICTを活用した建機業界の先進システム
拡張性、短期開発、カスタマイズ対応でPITT Qubeを選定

dummy杉村氏

 当初はCDで配布しているデータをWeb化し、販社や整備工場が常に最新の部品データで検索できるシステムを構築することが目標でした。しかし、リサーチを重ねる中で、単なるWeb化にとどまらない、より先進的な活用事例を耳にします。それが、建機業界で既に導入が進んでいるICTを使った予防保全システムです。「こうした事例を見て、当社も将来的な予防保全につながるシステムの選定が重要という認識を持つようになったのです」(杉村氏)

 候補となったシステム会社は、自動車メーカーのパーツカタログシステムを構築してきた数社のベンダーに加え、建機業界で実績を持ち、Webパーツカタログシステム「PITT Qube(ピットキューブ)」を提供するクオリカでした。「PITT Qubeは拡張性が高く、他のシステムと連携を取りやすいため、将来の予防保全システムにつながる第一歩になります。パッケージ商品のために短期の開発が可能で、我々が要望するカスタマイズにも対応できる自由度の大きさも魅力。そうした点からPITT Qubeを高く評価し、最終的に採用を決めたのです」(杉村氏)

 実際の導入プロセスでは、日野自動車が蓄積してきた従来のパーツカタログを活かすことを重視。現行のCDのシステムは長年増築を繰り返しており、またシステムそのものが複数存在していたために異なる検索ロジックや画面があり使いづらかった点も、今回の案件を機に統一。クオリカ社のPITT Qubeをベースに、既存データを変えることなく、以前の車種でも、今後発売される最新の車種でも、全て同じ画面で検索できるよう、日野自動車仕様に大幅にカスタマイズしています。既存の“資産”を残しながら、使い勝手だけを高めるフレキシブルな対応力が存分に発揮されています。多岐にわたるカスタマイズを施したにも関わらず、開発工程を同時並行で進める開発手法を用いたことも奏功し、約1年半という短期間で、同社にとって悲願だったパーツカタログのWeb化を実現できたのです。

導入後の成果

Web化により常に最新情報の閲覧が可能に
ユーザー独自の使い方ができるメモ機能が好評

Web化にあたってシステムの操作性とレスポンスの劣化が大きな懸念点としてありましたが、コア機能について慣れ親しんだ操作性を踏襲しつつ、レスポンスを意識した画面を設計から作り込んだことで問題になりませんでした。カタログデータの配信もCDの配布では約2カ月かかっていたところ、Web化によって1日あれば全世界に公開できるようになりました。国内1か所、世界3か所のデータセンターを活用したシステムインフラによって、国内外のどこからでも最新データを同様の速いレスポンスで検索できるため、使い勝手は大幅に向上しています。
システム稼働前には杉村氏を中心とする日野自動車の担当者とクオリカの開発担当者が、39社300拠点の系列販社の実務担当者を集めた実機をつかった教育研修を全国10ブロックに分けて実施した際、「ストレスのない業務が可能であることが実証され、各担当者から高く評価された」と杉村氏は続けます。

 そして、特にユーザーに好評なのがメモ機能です。例えば販社がカスタマイズでバンパーを変えた場合、カタログ上に変更した部品名や番号などを備忘録として入力することができます。修理などで交換する際にはそのメモを見れば、手間を取らずに検索して注文できるわけです。あるいは、車検時に交換する主な部品セットを車種ごとに記録できるパッケージ機能も備えています。こうした付加情報の記録によって、業界に精通していないパートの従業員の方など不慣れなユーザーでも、部品を探しやすくなりますし、これら情報を開示することによって関係会社全体に渡って有益な情報が共有できる点がメリットです。

 また、今回は全世界のユーザーに24時間365日サービス提供するということもあり、日野自動車のパーツカタログシステムでは初のサポートセンターを設置しました。24時間365日クオリカのスタッフが問い合わせに対応するという「手厚い体制でのサポートは非常に心強い」と、杉村氏は評価しています。

今後の展開

販売先の特徴を入力するなど顧客情報管理も実現
トータルサポートの一翼を担うツールとして進化させる

 Webパーツカタログのメモ機能は、ユーザーが独自にアレンジして使っていることも注目点です。例えば、ユーザーが販売先の特徴を入力するなど顧客情報管理ツールとして使う動きも見られます。情報公開する範囲を細かく制御する機能がついているため、適切なユーザーのみに情報開示できる利点を積極的に活用しているのです。「従来のカタログはメーカーが一方的に作成して配布するものでしたが、Web化した新しいパーツカタログはユーザーも手を加えることができます。それによって利便性が高まる、いわば“ユーザーによって成長するカタログ”であることが大きなメリットです」(杉村氏)

 一方、トータルサポート強化の一環として、パーツカタログを進化させた日野自動車ですが、すでに次の一手を見据えています。その一つが、整備方法をマニュアル化した整備解説書など技術資料とパーツカタログを連携させること。海外では、こうした情報連携をすでに図っている外資系メーカーが多く、同社も順次、キャッチアップしていく計画です。

 もう一歩進んで、予防整備保全システムの構築も視野に入れています。「建機業界では、システム側で建機部品の消耗を自動的に予測し、壊れる前に通知して交換を促す予防整備保全が実践されています。将来的には当社のトラックやバスでも同様のシステムを実現し、故障による顧客のロスを防ぎたい」と語る杉村氏。PITT QubeをベースにしたWebパーツカタログのポテンシャルは高く、今後は同社の事業戦略であるトータルサポートの一翼を担うツールとして、進化させていくことを目指しています。

杉村氏(中央)と、PITT QubeをベースにしたWebカタログシステムの導入を担当したクオリカ社員

お客様のプロフィール

会社名
日野自動車株式会社
所在地
東京都日野市日野台3-1-1
設立
1942年5月1日
資本金
72,717百万円(2018年3月31日時点(連結))
事業内容
トラック・バス、小型商用車・乗用車(トヨタ自動車からの受託車)、各種エンジン、補給部品等の製造、販売
従業員数
32,719人(2018年3月31日時点(連結))
売上高
1,837,982百万円(2018年3月期(連結))

サービス・ソリューション