ホーム導入事例ヤンマー株式会社

i-Reporterで生産ラインの検査をペーパーレス化
トレーサビリティシステムと統合し履歴管理を拡充

製造業

ヤンマー株式会社様

掲載日:2019年10月07日
  • 課題
    ・紙による生産ラインの品質検査・記録が煩雑で管理工数の無駄が発生
    ・データの検索や集計を紙資料を見ながら手作業で行う非効率性の解消
  • 評価ポイント
    ・ペーパーレス化を実現するためのシステムやソリューションの提案力
    ・基幹システムやトレーサビリティシステムと円滑に連携させる技術力
  • 効果
    ・作業員が検査結果をタブレットに入力することで時間や手間を大幅に削減
    ・検査結果はサーバー上で共有され、関係者がいつでも検索、閲覧可能に

課題

課題は非効率な「紙」による品質検査・記録の改善
事務作業に時間を奪われ、心も体も余裕のない日々


 ヤンマーはディーゼルエンジンや農業機械、建設機械、エネルギーシステムの開発・製造を主力事業としており、兵庫県にある塚口工場では、船舶推進用や発電用の中形・小形ディーゼルエンジンを主に生産しています。今後の生産台数増加に対応するため、業務の効率化を進めています。
 そうした中、課題に上がっていたのが、エンジンを作る際、部品・素材受入れ、切削加工、組立、運転検査、塗装、梱包・出荷の各工程の品質検査や記録を、全て紙のチェックシートに記入することによって、行っていたことです。具体的には、各工程管理者がExcelでエンジンの機種ごとにチェックシートを作成、印刷し、現場に配布。現場の作業者が記入、提出し、複数の上長が判子を押し承認後、最後に事務員が保管していました。
 塚口工場で事務を担当する赤﨑由佳氏は「月産数百台分のエンジンのチェックシートを集め、足りないシートがあれば工場内を探し回り、承認を忘れている上長がいれば督促し、シートをファイリングする…。それは気持ちに余裕がなく、煩雑な作業の毎日でした」と話します。加えて、品質に不具合が発生した時は、変化点を探すためにファイルを取り出して紙を一枚一枚調べなければならず、時間を浪費。また、完成したエンジンの認証を受けるために、紙の検査成績書の数値をPCに入力し直して書類を作り、必要部数を印刷し関係者に郵送するなど、様々な事務処理に多大な労力がかかっていたのです。


解決策

紙と“決別”し、クオリカによるペーパーレス化を選択
トレーサビリティシステムとi-Reporterを連携して構築


 そこで塚口工場が下した決断が、システムの導入による紙との“決別”です。導入に際して依頼したシステム会社はクオリカ。「最終的には全行程の品質検査や記録がペーパーレス化され、複数のシステムを連携させることによって全ての電子データの一元管理を実現するというクオリカの提案に私たちが納得し、開発を託すことを決めました」と、システム化を統括する水野郁男専任課長は話します。
 まず着手したのが、各エンジンの生産で、どのような部品を使い、どういった加工をして、どう組み立て、どんな運転検査をしたのか、どう塗装して、最終的にいつ出荷されたのかなど、サーバー上に全工程の履歴を残すトレーサビリティシステムの構築です。Oracleのデータ管理システムによって構築され、ヤンマーが既に運用している生産管理システムと連携させたことで、エンジンの型式や製造番号、仕様なども自動的に記録されるように設定されています。
 トレーサビリティシステムが稼働後、次に構築を目指したのが、チェックシートの電子化です。クオリカが提案したソリューションがタブレットに電子帳票を表示し、タッチペンで画面に数値などを直接入力できる「i-Reporter」。ヤンマーが今まで使っていたExcelのチェックシート(帳票)を、そのまま電子帳票に変換して使うことができる点に優位性を見出したからです。i-ReporterのデータベースはPostgreSQLによって作成。OracleとPostgreSQLという異なるデータベース間での連携も図り、全てのデータをOracleのデータベースで一元管理できるシステムを構築したのです。


ヤンマー株式会社 エンジン事業本部 特機エンジン統括部 生産部 YWK推進室

専任課長 水野郁男 氏(右)、赤﨑由佳 氏(左)



効果

バーコードシステムで若手でも使える簡便性を実現
電子帳票の共有に加え、作業の質の向上も導入の利点


 i-Reporterは各工程に順次展開する計画であり、最初に導入されたのが、「運転検査」の工程です。クオリカは現場の作業者が迷いなくより簡便に使えるように、バーコードシステムも提案し、導入。作業者は、エンジンの種類や工程ごとに異なる数百種類の電子帳票の中から、目前の工程のチェックに必要な帳票を、バーコードを読み取らせることによって、タブレット上に自動表示できます。
 さらに、生産の役割を担っているエンジンに記されたバーコードをタブレットで読み取るだけで、連携しているトレーサビリティシステムから型式や製造番号などを取得し、電子帳票に自動的に入力される仕組みになっています。「必要な電子帳票を選択したり、エンジンの型式を正しく記入するには、本来であれば一定の年月を要しますが、このバーコードシステムによって、若手でも簡単に使いこなすことができます」(水野氏)。こうして、バーコードを読み込み、表示された電子帳票に必要事項を入力し、それを複数の上長がデジタル上で電子承認後、自動的にPDF化され、サーバーに保存されるペーパーレスのシステムが、完成の時を迎えたのです。
 保存された電子帳票は共有され、関係者であればいつでもどこからでもアクセスして、取得することができる点も大きなメリットです。例えば、営業部門等に提出するための書類を、従来、印刷して郵送していた手間と時間が省かれ、関係各所の事務負担が大きく軽減される成果につながっています。
 効率化やコスト削減に加えて、もう一つ大きなメリットが、ペーパーレスによって作業者に時間の余裕が生まれることです。「以前は様々な箇所をチェックしながら、同時に紙に書き入れていくことを強いられ、リードタイムを意識するあまり焦って作業を行う場面もあったでしょう。それが、簡便に済むようになった今は、余剰時間を『しっかり確認する』『深く観察する』など、より重要なことに充てられるようになっています。こうして作業の質が向上できることも利点だと考えています」(赤﨑氏)。


導入を担当したクオリカ社員と一緒に


今後の展開

組立や出荷、塗装、在庫管理など他工程への展開を計画
生産管理システムとの連携強化、自動計測の導入も模索


 既存の生産管理システム、新たに導入したトレーサビリティシステム、そしてi-Reporterを使ったタブレット入力システムを連携させ、構築したペーパーレスの品質管理・記録のソリューション。ヤンマーでは運転検査で導入したことによる効果を実感しており、今後は組立や出荷、塗装、在庫管理など他の工程への展開も計画的に進めていく予定です。
 一方で、生産管理システムとの連携の強化も視野に入れています。「例えば、生産計画や個別エンジンの作り方を含めた詳細仕様なども、電子帳票に自動的に表示できるようになれば、熟練していない若手作業者を補完できるようになります」(水野氏)。
 あるいは、現在は部品などの寸法を作業者が測って入力しているところを、自動計測システムに変えることも一案。「ボタン一つで寸法を測って自動的に電子帳票に記載されるようになれば、これも作業負担を軽くすることにつながります。クオリカと相談しながら、そうしたシステムの強化も積極的に推進していきたいと考えています」(水野氏)。


生産中のエンジン前でタブレットに電子帳票を表示し、入力する作業者

お客様のプロフィール

会社名
ヤンマー株式会社
所在地
大阪府大阪市北区茶屋町1-32 YANMAR FLYING-Y BUILDING
設立
1912年(明治45年3月)
資本金
63億円
事業内容
農業機械、建設機械、産業用小形ディーゼルエンジン、船舶発電用/推進用ディーゼルエンジン、マリン用中小形ディーゼルエンジンなどを研究・開発、製造、販売。
導入事業場
エンジン事業本部 特機エンジン統括部 生産部 塚口工場
所在地
兵庫県尼崎市塚口本町5-3-1
事業内容
船舶用ディーゼルエンジン、陸用・産業用ディーゼルエンジン・ガスエンジンの加工から試運転までの一貫生産。