世界に先駆けたコマツの「KOMTRAX Plus」に参画
組込みソフトウェアの開発でライフサイクルコスト削減に貢献

製造業

製造業 コマツ様

掲載日:2020年01月21日

導入ポイント

  • 課題
    ●鉱山業界でもライフサイクルコスト(LCC)の削減が切実な課題に
    ●LCC削減の切り札「KOMTRAX Plus」の更改と新機能の追加を計画
  • 評価ポイント
    ●コマツのシステム開発の実績とノウハウが豊富だったこと
    ●力のある技術者を数多く揃え、柔軟に開発体制を整えられること
  • 効果
    ●世界で稼働する鉱山機械の健康状態、稼働状況を遠隔で把握可能に
    ●今後はデータをレポート化してユーザーへの報告と提案を積極化する

背景

世界の建設機械業界に革命を起こした「KOMTRAX」
鉱山機械にも標準装備して車両情報を吸い上げる

 コマツは、油圧ショベルやダンプトラックなどの建設・鉱山機械、小型機械などを製造販売するグローバル企業です。建設や鉱山の現場で新しい価値を創造するイノベーションに取り組み、近年では、次世代型製品として、自動化、無人化された建設・鉱山機械の開発と普及を推進しています。同時に、2001年から進めてきたのが、車両の位置や稼働状況、内部の異常などの情報を衛星通信によって遠隔で確認できる機械稼働管理システ「KOMTRAX」の標準装備です。「世界の建設機械業界に革命を起こした」とも言われるKOMTRAXに続き、大型の鉱山機械に特化した「KOMTRAX Plus」も開発し、標準装備を実現しています。
 KOMTRAX Plusは石炭や鉱石などを採掘する世界の大規模鉱山で稼働する超大型ダンプトラックや超大型油圧ショベルに搭載されています。鉱山業界でもコスト削減が大きな課題となっており、強く求められているのが、機械を購入して稼働させ廃棄するまでのライフサイクルコスト(LCC)を抑えること。KOMTRAX Plusはその課題に対し、二つの効果的な対策を実現します。一つは「車両の健康状態の管理」です。搭載されたセンサーでエンジンや排気の異常値をタイムリーに検出し、衛星通信で送信されたデータを常時モニタリングすることにより、不具合を起こす前に、現地に部品を送って修理やメンテナンスを施すことができます。それによってダウンタイム(休車時間)を短縮し、LCCの削減に寄与することが可能になるわけです。


評価

独自かつ複雑なシステムのため開発業者は慎重に選定
実績と技術力、開発体制で白羽の矢を立てたクオリカ

 KOMTRAX Plusを搭載するもう一つの利点は、「車両の稼働状況管理」が可能なこと。GPSを搭載しており、車載センサーとの連動によって、スピードや移動距離、ルートなどの稼働状況が遠隔のパソコン上で手に取るように「見える化」されます。スピードオーバーで走っているデータが確認できれば、オペレーター(運転者)に注意や指導を行い、事故を防ぐことでLCCに寄与できるのです。
 このKOMTRAX Plusは、数年に一度、機能の強化、追加のためにシステムを更改しています。ただし、独自かつ複雑なシステムであり、更改する組込みソフトウェアを開発するパートナー企業の選定は慎重に進める必要がありました。
 そうした中、コマツが白羽の矢を立てたのがクオリカです。「新しいKOMTRAX Plusの組込みソフトウェアは、コマツ独自のノウハウで構築する設計。その点、クオリカはコマツのシステム開発実績が豊富で、また、力のある技術者が20人規模の開発体制を柔軟に組める点も魅力。同時に複数種類ある鉱山機械の組込みソフトウェアを開発するために、まとまった人数を要する場面があるからです。技術的にも体制面でもクオリカは最適な選択でした」と、プロジェクトを統括する主任技師の中川路良彦氏は振り返ります。
 早速、クオリカは技術陣を送り込み、従来、KOMTRAX Plusで使われていた組込みソフトウェアの仕様を精査。新機能の仕様書も理解し、基礎設計のフェーズからプロジェクトチームのメンバーとして、システム開発に取り組んでいったのです。


開発本部ICT開発センタ
車両アプリソフト開発グループ 主任技師 中川路良彦 氏

効果

厳しい環境でも止まることが許されない高いハードル
知見と技術力で要求通りの組込みソフトウェアを実現

 組込みソフトウェアに関して、一般的なものとKOMTRAX Plusの場合で最も異なる点は、「使われる環境がシビアなこと」と「24時間365日障害や誤作動で止まることが許されないこと」です。まず、鉱山は極寒や酷暑など環境がシビアな場合が多く、さらに、稼働中は未舗装の道路で、振動や砂埃が激しくなり石や岩が車両に当たるなど、多くのアクシデントが考えられます。
 そして、鉱山は世界のへき地に点在しており、障害や誤作動が起きた際に、コマツやクオリカの技術者が直接出向き現場でのリセットや応急処置で稼働できるようにする、といった対応が難しいのが現実。つまり、何があっても止まらない高い信頼性のシステムであることが絶対条件になります。クオリカでは、紆余曲折を経て、知見と技術力によってその高いハードルをクリア。コマツの要求通りの組込みソフトウェアを完成させ、全ての新しい鉱山機械への導入を着実に進めていったのです。
 KOMTRAX Plus搭載の実際の具体的な効果では、例えば、片側のエンジンの排気温度の異常値を本部が把握し、現場のメカニックが給気管のクランプの破損を発見して交換修理を実施。エンジンの大破を未然防止できた事例があります。また、エンジンの内部摩耗によりブローバイ圧(漏れたガスによる圧力)が徐々に増加するデータが確認されたため、オーバーホールを実施。修理費の低減、稼働率の維持が図られたケースもあります。
 車両の健康状態を知ることは、こうして、使用するユーザーのメリットになるばかりでなく、部品や修理作業を行うアフターマーケットビジネスの活性化にもつながります。「一台の鉱山機械からKOMTRAX Plusで取得できるデータは数百件に及びます。今後はこれらのデータを定期的にレポートにして、ユーザーや国内外の販売代理店に報告し、点検や修理あるいはオペレーターへの指導などの提案を、今まで以上に本格的かつ積極的に行っていきたいと考えています」(中川路氏)。


今後の展開

クオリカはコマツの実績を活かし、他企業、他業界へ進出
アフターマーケットビジネスやIoT化への貢献を目指す

 様々な産業でIoTが話題になっていますが、このKOMTRAXこそがIoTの先駆けであり、日本が世界に誇れる成功例です。その鉱山機械版となるKOMTRAX Plusの開発を成し遂げ、今も次世代バージョンに向けた開発をパートナーとして続けているクオリカ。これからはコマツでの実績を活かし、他の企業、業界にも進出する計画です。想定される領域は建設・鉱山機械にとどまらず、車両などの移動体、あるいは制御が必要な工場の機械など多岐にわたります。各企業の機械、取得したいデータに合わせて、最適にカスタマイズされた組込みソフトウェアの開発、提供を目指します。
 鉱山というシビアな環境で稼働する組込みソフトウェアを作った経験値とノウハウが強みです。「高い信頼性のアプリケーションを組んだ実績のあるクオリカは、今やどの産業でも通用する開発力を持ち合わせている」と、中川路氏も評価します。今後、クオリカでは、攻めのアフターマーケットビジネスを模索する機械メーカーや、そのほかの機械のIoT化を検討する企業に対し、組込みソフトウェア開発を積極的に展開していく予定です。


導入を担当したクオリカ社員と一緒に

お客様のプロフィール

会社名
コマツ
所在地
東京都港区赤坂二丁目3番6号(コマツビル)
設立
1921年(大正10年)5月13日
資本金
連結 683億11百万円(米国会計基準による)
事業内容
建設・鉱山機械、ユーティリティ(小型機械)、林業機械、産業機械などの事業をグローバルに展開。