ホーム導入事例東芝エレベータ株式会社

独自のスキル管理システムで技術員の技能を可視化
技術等級の承認、人財育成計画、人員配置に効果

製造業

東芝エレベータ株式会社様

掲載日:2019年05月22日

導入ポイント

  • 課題
    ●従来のアナログ管理では技術等級制度の管理・運用の効率化に限界
    ●技術員本人と上司がひと目でスキルを把握可能なシステム化を希望
  • 評価ポイント
    ●作業実績、研修受講実績、取得資格を統合管理するデータベースを構築
    ●人財育成計画の作成や人員配置時のスキルマッチングがより細やかに
  • 効果
    ●スキル取得状況が可視化され、人財育成計画や自己啓発がより円滑に
    ●等級決定のプロセスが明確になり、制度のより一層の公正化に寄与

課題

技術員の効率的なスキルアップに向け等級制度を導入
技術員のスキルを即座に把握できるシステム化を希求

 東芝エレベータは、昇降機の開発・設計・製造・販売から保守・リニューアルまでを一貫して行う大手昇降機メーカーです。超高層ビル・建築物への納入も多く、「東京スカイツリー®」や「あべのハルカス」、台湾・台北市地上101階建ての「TAIPEI101」などにも製品が納入されています。
 近年、ビルの高層化に伴うエレベーターの高速化や台数の急増などを背景に、課題となってきたのが保守や整備を担う技術員のスキルアップの効率化です。「先輩技術員から時間をかけて技能を伝承する従来型の人財育成だけではなく、より効率的にスキルアップを図れる仕組みが必要でした。そこで2000年代初めに導入したのが、8段階の技術等級制度です」と、同社フィールド教育企画担当グループの佐藤勇治グループ長は話します。技術等級制度とは、現場でのOJTによる作業実績や研修受講実績、資格取得などの一定条件を満たすと等級が1つずつ上がっていく制度。上位の等級になるほど現場で行える作業が増え、難度の高い仕事に抜擢されるようになるほか、昇給や昇格にも影響していきます。等級によって各技術員のスキルが明確化されることにより、所属長(上司)が従来よりもきめ細やかに部下の人財育成計画を立案可能となったほか、技術員が自身の等級アップを目標とした研修の受講や資格の取得などを図ることも可能になりました。
 ただし、制度導入後しばらくして大きな問題が浮上します。それは技術員のスキルが、本社や支社・支店・営業所間のメールのやり取りや表計算ソフト、紙の資料などでアナログ管理されていたことです。「各技術員の研修受講実績や作業実績などの確認作業が煩雑で、万が一の抜けや漏れのリスクもありました。それを即座にわかるように“見える化”できないか。その実現のために着手したのが、クオリカによる『スキル管理システム』の設計・開発だったのです」(佐藤氏)。

効果

現場と作業者の正確なスキルマッチングに効力を発揮
不足スキルを補いやすくなり、技術力の底上げに貢献

 「スキル管理システム」の導入による大きなメリットは、所属長が組織の保有スキルや部下の作業実績、研修受講実績、資格取得などのスキル修得状況をPCの画面上で統合的に確認できるようになり、部下の人財育成計画が格段に立てやすくなったことです。技術員も自身の保有スキルや不足スキルが画面で簡単に確認でき、所属長に対して自ら具体的な研修の受講や資格取得を願い出ることができます。
 同社では年に1回、それぞれの技術員が作業や研修受講の実績を基に等級アップの申請を行います。その際も、本社の人財育成担当部門が、申請通りに条件を満たしているかを画面上で迅速かつ正確に確認できるようになり、承認プロセスの公正化にも寄与しています。
 一方、現場ごとの作業者の選定にも「スキル管理システム」が効力を発揮。従来は個々のスキルを統合的に把握することが難しく、人選時に所属長や上司の主観が入る可能性も否めませんでした。システム導入後はスキルが可視化され、現場と作業者の正確なスキルマッチングが図れるように改善。「従来は担当者が何日もかけて、数千人の技術員のスキル把握の作業を行っていましたが、システム化によって短時間かつ高精度に行えるようになっています。足りないスキルが見える化されることで、補いやすくなり、当社全体でも技術員の技能の底上げにもつながっています」(同社フィールド安全・教育管理部 葉坂敏隆部長)。

左から 東芝エレベータ株式会社 グローバルフィールド事業本部フィールドサービス統括部フィールド安全・教育管理部部長 葉坂敏隆 氏
東芝エレベータ株式会社 グローバルフィールド事業本部フィールドサービス統括部フィールド安全・教育管理部フィールド教育企画担当グループ長 佐藤勇治 氏

システム刷新

等級アップのために必要な修得項目を、具体的に明文化
システムを進化させる一方で、人が介在する余地も残す

 その後、スキル管理の精度をさらに高めるため、人財育成体系の見直しとシステムの刷新も実施しています。人財育成体系は今まで、「等級、教育分類、属性、教育名称」の4階層で構成されていましたが、等級を上げるために修得が必要な項目の内容が明文化されず、やや分かりにくいのが実情でした。そこで見直しでは「等級、実務区分、修得項目」の3階層の構成に改変。等級ごとに「基本、技術、技能、一般(コンプライアンスなど)」の4つの実務区分で求められる能力を規定し、その能力を得るために必要な修得項目を具体的に文章で明記して、「どんな内容の修得項目を取得すれば等級がアップできるか」をよりわかりやすく整理し直したのです。「イメージとしては、今までは『計測器』という項目1つだったものを、『計測器を使った測定』『計測器の種類別』『測定方法』などと細分化して、具体的な修得項目として明示しました」(葉坂氏)。
 修得項目の数は、全等級で合計すると300を超えます。複数の集合教育を受講することで1つの修得項目が取得できたり、逆に1つの教育を受けることによって複数の修得項目が取得可能になったり、複数の細分化された修得項目を取得することで1つの大きな修得項目の取得の承認が得られるなど、項目同士が条件によって関連付けられ、構成されているのが特長です。その複雑な構成をクオリカが、システム化によって画面上で見やすく明示。各技術員の修得項目の取得状況が即時に把握できると共に、技術員の異動時も、スキルのデータや人財育成計画作成、承認などの権限が自動的に新しい所属部門に移るなど、組織改変にも連動する仕組みを取り入れています。
 ただし、全てを自動化することは回避。例えば、資格や修得項目などの「合否」は、直属の上司にメールが発信されるように設定されています。「不合格の時は理由も明示。それを上司から本人に伝えることでフォローが可能になり、モチベーションの維持も期待できます。全部をシステム任せにせず、人が介在する余地を残すことが、当社のスキル管理システムでは重要なポイントです」(佐藤氏)。

導入を担当したクオリカ社員と一緒に

今後の展開

新スキル管理システムで年間人財育成計画立案が円滑化
保守部門での導入を皮切りに、他部門への展開も計画

 昇降機に関する技術は日進月歩で、それに合わせて修得項目を新たに加えたり、削ったり、あるいは取得できる条件の組み合わせを変えたりすることも可能。こうして実務に合わせた追加や見直しがシステム側で柔軟に行える点も、クオリカが構築した「スキル管理システム」の利点です。「スキル管理が具体的な修得項目まで落とし込まれ、曖昧な部分や主観が入り込む余地がなくなり、加えて、技術の進歩にも柔軟に対応できる構造になっています。システム刷新への社内の反応は良好で、特に修得項目の具体化によって、部下の年間教育計画が立てやすくなった点が評価されています」(葉坂氏)。大幅に刷新されたシステムは、まずは保守部門に導入され、今後は整備部門、品質部門などでも採用していく予定です。
 「スキル管理システム」導入前の東芝エレベータがそうだったように、社内のスキル管理に課題を抱える企業は少なくないでしょう。たとえ人財育成体系を構築しても、それが円滑に回らなければ管理部門の負担や障害になるリスクがあります。その点で、東芝エレベータが取り組んできた技術等級制度のシステム化は、成功例として参考になりそうです。

お客様のプロフィール

会社名
東芝エレベータ株式会社
所在地
神奈川県川崎市幸区堀川町72-34
設立
1967年2月18日
資本金
214億772万8千円
事業内容
昇降機(エレベーター、エスカレーター)の研究開発・設計、製造、据付、保守・監視・改修、リニューアル、およびビルファシリティーの導入、リニューアル、継続的な管理支援などを展開。

お問い合わせ先:MA第二事業部
TEL:03-5937-0750
FAX:03-5937-0802