製造業 ヤンマー株式会社様
システム導入の背景
製品の競争力維持を推進するために
産業用エンジン、農業機械、小型船舶などの製造販売を行なう、ヤンマー株式会社様は日本を代表するトップブランドとして大きな活躍を見せています。琵琶湖にほど近い同社の山本工場は、ヤンマーグループのダイカスト製品を生産するマザー工場です。
同工場では、より良質・精密なアルミ部品を製造するために、ダイカスト法による鋳造を行なっています。溶かした金属を、圧力をかけて金型に注入するこの鋳造法は、湯流れや凝固状況の正確な把握が難しく、これまでは熟練者の経験と勘をもとに鋳造技術の向上が進められてきました。鋳造方案の設計ではトライ&エラーを積み重ねる取り組みが必要で、それだけに金型改造には多くの費用と時間(日数)を要します。加えて、経験のある技術者の高齢化と言った問題があります。こうした背景のなかで、品質安定、コスト低減、期間短縮などの目標を実現するため、JSCAST(ジェイエスキャスト)の導入が図られました。
お客様が語る導入のポイント
解析結果と実現象の高い整合性が最適な方案設計に貢献
生産統括部 生産技術部 生産技術グループ
伊藤 雅博 様
ダイカストは高温・高圧下で、さらに薄肉で複雑な形状なので、熟練者でも経験のない形状の方案設計は難しいものです。もともとヤンマーでは砂型鋳造でJSCASTが導入され、不良低減や新機種立上げで成果を上げてきました。より高度な鋳造方法のダイカストだからこそ、JSCASTというコンピュータ支援による解析が効果を発揮すると考えていました。
ダイカストは方案変更の際、金型修正費用と日数が多くかかります。そのため、費用低減や時間短縮は避けて通れる問題ではありません。また、品質にいたっては、方案設計がほとんど占めると言っていいほど影響がとても大きいものです。冷却系を含めた方案設計を極めることが、費用の削減、期間の短縮、安定した品質での生産を可能にします。
さらに現場技術者の高齢化も大きな要因のひとつです。本来若手技術者に経験で得られたノウハウなどをバトンタッチしていかなければなりませんが、技術伝承することは非常にむずかしいことです。そのため、技術的にサポートするツールのひとつとして必要性を感じていました。実際、JSCASTで現象を解析できるので、ダイカストの担当になって3年目というキャリアなのに、鋳造技術者と対等に意見を交換し討論ができるなど、技術サポートのツールとしてとても役立っています。
選定の基準
複雑な現代鋳造技術に応える解析性能
「解析結果と実現象との整合性というところに選定の基準として重点を置きました。湯流れと温度については、実際のダイカストの金型にセンサーを埋め込み、熱物性値や熱伝導率などの物性値や境界条件をヤンマー固有の値として合わせこみを行なったところ、整合性が飛躍的に向上しました。それだけに解析結果には満足していましたし、砂型での実績もあってJSCASTに決定しました。実測を多くしているだけに不良低減には効果を発揮します。さらにショートショット(実際の射出量より溶湯量を少なく設定し、充填途中の湯流れ状態などを確認する)による検証の結果、解析結果とほぼ一致していました。
計算速度も選定の基準の一つです。差分法を扱い、1000万要素以上の解析計算も問題無く実行でき、また、形状が複雑で薄肉のダイカストなどでの規則-不規則混合要素での解析計算が可能なところも、選定する上での大きな要素になりました。背圧・ベント考慮など、複雑な鋳造技術に応えるツールとして期待しました。」(伊藤様)
システムの活用と導入成果
新機種立上げ期間短縮とコスト低減に効果を発揮し、技術サポートにも期待
「ダイカストにはゲート方案、ガス抜き方案、冷却方案、押し出し方案の4つの方案があります。押し出し方案以外はJSCASTによる解析をもとに図面の出図前に完成しているのが理想です。そのため新機種立ち上げ時には、図面を作る前に開発で作成した3Dモデルをもとに方案をモデル化し、鋳造解析による方案設計を行なっています。この設計フローを用いることで、従来と比べて新機種立上げ期間を約30%短縮することができました。
解析する立場なので、現場の技術者と一緒になって解析結果を検証しますが、経験のある技術者から「実際の現象とは異なる」という意見はほとんどありません。また、解析が不良発生を予測する部分には結果通り不良が発生しますので、方案の妥当性検討に効果を発揮しています。新機種については、すべてをJSCASTを用いて解析することで方案を決定しています。不良に関してもJSCASTは不良低減活動に非常に役立っています。」(伊藤様)
クオリカ担当者が語る導入のポイント
最適な方案作成のツールとしてご提案
JSCASTグループ 木下慎一
ヤンマー様には以前より砂型の鋳造現場にJSCASTを導入いただいておりました。弊社の鋳造方案CAEシステムであるJSCASTは、方案の妥当性はもちろん、不良の発生位置を検討することを可能にしたもので、より複雑で高度な鋳造方式のダイカスト製品の生産現場でその性能を発揮できるものと考えていました。最適な鋳造方案設計に加え、ハイサイクル鋳造を目指すヤンマー様に、量産品の品質向上・コスト低減活動に貢献できるシステムとして、今後も最新の情報提供を行なっていきたいと思っております。
お客様のプロフィール
- 会社名
- ヤンマー株式会社
http://www.yanmar.co.jp/
- 所在地
- 大阪府大阪市北区
- 設立
- 1912年
- 資本金
- 62億円
- ●産業・建設機械分野
- 産業用エンジン、小型建設機械他
- ●エネルギー分野
- GHP、コージェネレーションシステム他
- ●マリン分野
- プレジャーボート、フィッシングボート、大型船舶の船内発電装置他
- ●農業分野
- 農業用機械、農業施設他
- ●環境・生活分野
- 排水施設、クールコンテナ、生ゴミ処理施設他