生産から販売まで製品の流れをトータルに「見える化」

システム導入の背景

生産管理と販売管理を統合するシステム開発と組織づくりを推進

建設機械分野のリーディングカンパニーとして国内外に数多くの拠点を展開するコマツ。ハイブリッド建設機械をいち早く開発するなど、その取り組みは業界の枠組みを越えて注目を集めています。コマツでは、2011年5月に迎えた創立90周年を機に、販生(販売・生産)業務改革プロジェクトを遂行。生産管理と販売管理を統合する組織づくりとシステム開発に取り組みました。その体制の中枢となるグローバル販生オペレーションセンタの所長、西脇智彦氏は次のように語ります。
「これまで当社では、生産や出荷、物流など製品に関わる情報を生産部門と販売部門でなかなかタイムリーに共有できず、効率化を進めるにあたってさまざまな問題が生じていました。そこで今回の改革では、両部門それぞれの管理機能を統合したオペレーションセンタを新設し、生産・販売・在庫を一元的に計画・管理する体制を構築。そして、工場内の生産からお客様に届くまでのトータルな流れを“見える化”するシステムを開発したのです」
従来までのシステムでは、生産側と販売側が完全にはリンクしていなかったため、たとえば工場側では出荷した建設機械がいつどのようにお客様の元に届いたのかわからない、逆に販売側では工場での生産状況が把握できず納入の時期が読めない、などの問題が発生していました。これらの課題を一気に解決する画期的なシステムが、『Kom-VISION』(コムビジョン)だったのです。

グローバル販生オペレーションセンタグローバル販生オペレーションセンタ

 

コマツ 生産本部 生産管理部長(兼)グローバル販生オペレーションセンタ  所長
西脇 智彦様

導入時の課題

生産と販売のデータを連携させ、イントラネットを介してパソコンで活用

この『Kom-VISION』は、従来まで生産と販売で別個に管理していたデータを連携させ、イントラネットを介してパソコンで製品に関わるさまざまな情報を活用するシステムです。その開発について次のように話すのは、システムの導入を統括した同社の椋木千秋氏。
「開発にあたってはまずシステムで提供する情報を徹底的に洗い出し、詳細なシステム要件を決めました。これらの要件をもとに、クオリカのスタッフとは毎週ミーティングを行い、同じ部門の同僚のような感覚で連携して開発を進めることができました」
『Kom-VISION』の開発では、鍵を握るデバイスがありました。工場内にある製品の位置を把握するためのGPS付ICタグです。コマツでは、建設機械にGPSやセンサーを搭載し、作業中の位置や稼働状況をリアルタイムで掴む機械稼働管理システム『KOMTRAX』(コムトラックス)を導入していますが、工場内でのGPS付ICタグの使用は初めてのチャレンジ。タグの機種選びから生産中の製品に装着する位置までさまざまな検討を重ねました。

コマツ 生産本部 グローバル販生オペレーションセンタ
椋木 千秋様

システムの活用と導入の成果

生産から物流、販売までトータルな動きをリアルタイムで“見える化”

『Kom-VISION』の開発は2010年秋からスタートし、約半年後の2011年5月に稼働。その後、改良を重ねて2012年4月より本格稼働し、国内の生産・販売部門、販売代理店を中心にトータルな情報を提供しています。
さて、その『Kom-VISION』の内容ですが、製品ごとの機種や仕様などの基本情報に加えて、実に詳細な項目を網羅しています。たとえば工場内の製品については、どの生産工程上にあるかをリアルタイムにキャッチ。工場出荷の日時、荷姿など製品の状況まで把握できます。販売代理店に届くまでの物流では、輸送するトレーラのスケジュール、船便であれば出入港の場所などを含む詳細なスケジュール。さらに販売代理店での到着日・出荷日、お客様に納入した日時まで、まさに生産から販売までの製品の動きが「見える化」されています。
「さらに各項目をグラフなどで解析できる機能も備えています。たとえば販売代理店における製品の滞留時間の多様な分析が可能。製品によっては代理店で長時間かけて改良されているなどの実態がわかり、それらの作業を工場で代替するといった改善点も発見できました。工場内の生産ラインの改善にも大いに役立っています」と語るのは椋木氏。
また、同時に開発された『工場View』との連携によって、生産ライン上の位置をアイコンで表示し、工場内に設置したWebカメラによってその様子をパソコンで見ることも可能。これら『Kom-VISION』や『工場View』『グローバル販生在コックピット』『KOMTRAX』の4つのシステムを、大阪工場内にあるグローバル販生オペレーションセンタで統合管理しています。このセンタの所長である西脇氏は、『Kom-VISION』のこれからの展開を次のように話します。
「工場の状況や製品の納入時期などが詳しく把握できるなど販売代理店の評価も高く、工場出荷日時をメールで自動配信する仕組みがほしいといった声も届くようになってきました。今後はこのような新機能の開発、解析機能の充実などの改善に取り組んでいきます」
『Kom-VISION』は現在、国内の全工場とタイ、インドネシア、インド、ロシアの工場のデータが統合されており、さらに欧米の各工場にも拡大していく計画です。このようなコマツの積極的なICT戦略を、クオリカはこれからもサポートしていきます。

『Kom-VISION』製品進捗画面

『Kom-VISION』解析画面(ラインON計画・実績)

『工場ビュー』と連携した画面

お客様のプロフィール

会社名
コマツ
http://www.komatsu.co.jp/
会社名
コマツ
所在地
東京都港区
設立
1921年5月
資本金
67,870百万円(連結:米国会計基準による)
事業内容
建設・鉱山機械、ユーティリティ(小型機械)、林業機械、産業機械など