ホーム導入事例日産自動車株式会社

鋳造方案の最適化により引け巣の低減を実施し、資源の有効活用も実現

システム導入の背景

鋳造方案設計について十分な事前検討を行うために

エンジンブロックエンジンブロック
栃木工場全景栃木工場全景

日産自動車様の国内工場では最大の面積を誇るのが栃木工場。敷地内には世界トップレベルの生産性を印象づけるように、全長6.5kmの高速耐久テストコースをはじめ、工場・施設が整然と並んでいます。同工場は1968年にアルミ・鉄の鋳造をもって操業をスタートし、翌年にはアクスルの機械加工・組立を開始。1971年の組立工場の完成に伴い、車両の最終組立までを行う一貫体制を確立しました。プレスから車体組立、塗装、トリム(車両組立)、ユニットマウント、オフライン、ファイナルテストまで、お客様にお約束した短い納期でお届けする日産生産方式=「同期生産」(すべての工程が順序と時間を守って作業を進める生産システム)により行われています。現在ではプレジデント、シーマ、GT-R、フーガ、スカイライン、フェアレディZ、インフィニティといった高級車やスポーツカーを生産しています。また、1990年に第一鋳鉄工場を新鋭化。アクスル、デフケース、カムシャフト、クランクシャフト、シリンダーブロック、など、幅広く製造し、鋳鉄鋳造部品のマザー工場にもなっています。
同社栃木工場の鋳造現場で続けられてきた取り組みのひとつが、"最適設計での鋳造"です。製造原価の低減はもちろん、検討試作期間の短縮も視野に入れた、設計との同席設計にて形状作成及び鋳造方案の最適化を目指していました。これまで様々なツールを導入して解析を試みてきましたが、凝固の挙動が複雑なため、どれも事前検討をする上で十分な結果を得ることはできませんでした。鋳鉄のマクロ引け巣は閉ループ法で予測。しかし、成分変動や相変態、接種の影響など、鋳鉄固有の要因を扱うことができないため、方案設計に必要な解析が不可能でした。

お客様が語る導入前の課題と選定基準

JSCASTは、鋳鉄引け巣を合理的に予測できる唯一のソフトとしてよく認知

パワートレイン生産技術本部 パワートレイン技術開発試作部
工法開発グループ 主担(鋳造CAE)工学博士 恩田 祐様(中央)
パワートレイン生産技術本部 成形技術部
鋳造技術グループ 中村 正人様(右)、松本 和也様(左)

「以前は鋳鉄に対する有効な引け巣予測技術はありませんでした。解析結果に求めるのは、合理的な方法での予測です。もともと弊社は"革新的鋳造シミュレーション技術研究プロジェクト※"の評価メンバーだったことで、このシステムの開発において関わりをもってきたこともあり、JSCASTが鋳鉄引け巣を合理的に予測できる唯一のソフトであることをよく知っていました。」と語るのは、同社パワートレイン生産技術本部 パワートレイン技術開発試作部 工法開発グループ 主担(鋳造CAE)恩田 祐様。さらに「鋳造方案CAEソフトであるJSCASTは、方案の妥当性、欠陥発生位置を簡単な操作で検討することができるシステムです。コンピュータ支援による凝固解析を活用することができ、これまで製品形状が決まるまで検討できなかった事前検討について期待ができると評価しました」と、同パワートレイン生産技術本部 成形技術部 鋳造技術グループ 中村 正人様。

※大学連携型プロジェクトである工業技術院新規産業創出型産業科学技術研究開発制度に基づき、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から(財)素形材センターへの委託により、平成11年度から平成14年度の4ヶ年計画で実施されたプロジェクト。日産自動車様は評価メンバーとして参画。

JSCASTの位置づけと導入の効果

重量増加なく引け巣低減を実現、資源の有効活用にも貢献

従来方案従来方案
最適方案「玉子型押湯」最適方案「玉子型押湯」
(押湯単体重量50%削減)

日産生産方式のなかでの製品の信頼性をさらに向上すること。また、最適設計の実現により原価を低減すること。さらには実際に試作するより、バーチャルで効率よく評価することで完成度を高め、検討試作期間の短縮を図ることなど、様々な角度から効率的で高品質の鋳造を求めるツールとして導入したのがJSCASTです。
実際には、鋳造方案の最適化により、重量歩留りを大きく向上でき、CO2削減にも貢献している。さらに鋳造品質も向上。また、同期生産活動では部品形状の最適化の提案を行いました。具体的にはシリンダーブロックの材質コントロールやデフケースの最適な押湯形状を実施。重量を増加することなく、引け巣の低減を図ることができました。資源の有効活用としても大きな成果であり、納期の短縮も実現しています。(中村様) 

■位置づけ

Quality 「同時生産」段階での信頼性向上
Cost 原価低減のツール
Time 試作段階においてバーチャルによって検討試作期間短縮

■効果

Cost & Ecology 鋳造方案の最適化による重量歩留りの向上
→[CO2削減]
デフケース歩留り向上:15%向上実施
Quality 鋳造品質の向上
Cost & Time 「同時生産」活動による部品形状の最適化提案
シリンダーブロックの材質コントロール、
デフケースの最適形状実施
重量増なしで引け巣低減実施
技術開発 技術開発バーチャル評価のツール(軽量化)

クオリカ担当者が語るシステム導入のポイント

解析性能向上とサポート体制の充実を持って、「同期生産」に貢献

クオリカ西日本事業部JSCAST室 左から迫伸生、水野裕介、木下文昭クオリカ西日本事業部JSCAST室
左から迫伸生、水野裕介、木下文昭

JSCASTの開発では日産自動車様が「革新的鋳造シミュレーション技術研究プロジェクト※」の評価メンバーとしてご活躍いただき、併せて技術供与いただいたことで、引け巣予測のシステムが完成しました。また、JSCASTの前身であるSOLDIAにおきましても、弊社にとっての初めてのお客様であります。こうした経緯もあり日産自動車様はJSCASTの理解が深く、現在、鋳造の現場でご利用いただいております。
解析精度、速度の向上。また解析可能な適応範囲の拡大など、ご要望のお声をいただいております。日産自動車様独自の生産方式である「同期生産」に貢献するシステムとして、今後もこうしたお客様の声を活かしたバージョンアップにより期待されるシステムとして性能の向上を図り、また最新の情報提供などサポートの充実も進めていきたいと思っております。

お客様のプロフィール

会社名
日産自動車株式会社
http://www.nissan.co.jp/index.html
本社所在地
〒104-8023 東京都中央区銀座六丁目17番1号
設立
1933年(昭和8年)12月26日
資本金
6,058億13百万円
敷地面積
約2,922,000㎡
従業員数
6,500名(2008年3月末現在、栃木試験場を含む)
生産能力
約22万台/年(残業・休出なし前提。最大能力は約26万台/年)
生産品目
プレジデント、シーマ、フーガ、スカイライン、フェアレディZ、GT-R、350Z、インフィニティM、G、EX、FXシャシー部品

サービス・ソリューション