課題
個別に構築してきたシステムに感じた限界
基幹システムを刷新するプロジェクトを開始
UTグループは製造現場を中心に人材派遣を行う東証プライム上場企業です。積極的なM&Aによりグループ会社を増やし、現在その数は10社に上ります。創業時、人材派遣では異例だった無期雇用(期間を定めない雇用)で社員を採用するなど、チャレンジングな取り組みで業界を牽引するリーディングカンパニーです。
ただし、近年は様々な課題にも直面しています。その一つがシステムの問題です。同社経営改革部門執行役員の並木大氏は次のように話します。「人材派遣事業は、製造業や小売業などのような設備投資が不要で、人材の需要と供給がマッチすると一気に拡大するビジネスであり、私たちもこの事業特性を活かしてこれまでの成長を遂げています。しかしその反面、ここまで業務環境・システムを丁寧に準備する時間がなく、特にシステムは必要に応じて継ぎ足しに構築してきた部分があり、非効率な部分、アナログな部分が多数存在といった課題が山積でした。これからのUTグループの成長を考えると、限界を迎えていたというのが実態でした」。
そこで、同社が決断したのが、基幹システムを刷新することです。それは十数社のベンダーが参画しての大規模なプロジェクトでした。業務ポータルの機能を選定する中、kintoneが入り口としての役割と、各システムのワークフロー機能で不足している部分を補う役割が期待され、UT東芝への導入実績があるクオリカに構築の依頼が来たのです。「kintoneの説明を聞いた時は、機能のシンプルさと表現力の柔軟さに長けているサービスという印象を受けました。ワークフローや様々な最新情報、ドキュメントの保管場所としても有効で、従業員にとって業務の入口として活用可能な点も評価ができるポイントでした」と、並木氏は当時を振り返ります。
選定
kintoneをPoCにより実現性を検証
クオリカの開発経験と知見に信頼を寄せる
ただ、同社がkintoneを利用した経験がない中で、不安を抱えていたことも事実です。「当社のような大規模なシステムでも果たして機能するのか、いってみれば、サービスの“奥行き”が未知数であることが不安要素でした」(並木氏)。
そうした中で、同社は、kintoneのポータルをカスタマイズすることによって、大人数の従業員が利用する業務ポータルとして活用できるかを検証するためにPoC(概念実証)を行い、クオリカは期待に応える成果を出すことに成功しました。
さらに、同社がPoCで手ごたえを覚えたのは、kintoneの有用性だけではありませんでした。「判明したことは、クオリカのエンジニアがkintoneの開発経験を多く持ち、知見が豊富であるということ。この機能の実装が可能か、不可か、あるいは、実装することで業務が容易になるのか、逆に妨げになるのかなど、私たちの疑問に対して、安定して的確なコメントを返せることが分かった点は大きな収穫でした。製品にもクオリカに対しても安心と信頼を寄せることができ、私たちはグループ全体でもkintoneの採用を決め、システムに組み込むプロジェクトを始める決断をしました」(並木氏)。
導入
kintoneをデータの入り口に、ETLツールを
通してkintoneと各システムとを連動
kintoneの導入案件では、推進する中で様々な設計変更も行われています。当初、入口としての業務ポータルを担う想定で開発を進めていきましたが、kintoneが豊富なAPIやプラグインを持つことに着目。kintoneをデータの入り口とし、ETLツールを通してkintoneと各システムとを連動させるIT基盤として活用して、自動的にデータの授受ができる仕組みを構築する設計にスコープを広げたこともその一つです。クオリカはkintoneを業務ポータルとしてカスタマイズするだけでなく、その連携対応も実施し、データが連動する仕組みを構築したのです。
ただし、他のシステムとの連携では、プロジェクトに参画する他のベンダーとの折衝が不可欠です。クオリカは経験と知見を活かし、「そこはkintone側で処理する」「それは出元のシステム側で対応するのが得策」など、最適解を導き、最終的にはUT側が意思決定して推進。クオリカの担当者は、全ベンダーを集めた会議でも、全体最適を念頭に着地点を見い出すことに尽力し、「各担当者と意思疎通して議論をリードする役割を果たしていただけた」と並木氏は言います。
また、kintoneはアジャイル開発を適用しやすく、途中でスコープを変更した場合、適宜組み替えや対応可能な点も、今回の案件では奏功しています。「当初考えていた設計に関して、構築プロセスの途中で現場や実態との乖離が明らかになる場合もあります。そうした事態が生じてもニーズにアジャストするために随時設計変更できたのは、kintoneとクオリカが柔軟性を有していたからです」(並木氏)。
一方、ワークフロー機能もkintoneで構築した業務アプリを活用。当初は他の人事システムにバンドルされた機能を活用する計画でしたが、硬直的であり、本社・子会社で階層や組織が異なる中、適さないことが判明。代替案としてkintoneの機能をカスタマイズし、各社の様々な階層、規定のパターンに対応しつつ、画面や項目は標準化され、共通の利用体験を可能にするワークフロー機能が実装できています。
成果と今後の展開
業務ポータルは洗練され、優れたUI/UXを実現
周辺システム間のデータの完全連動も達成
kintoneの機能をカスタマイズして作成された業務ポータルは、見た目は企業のウェブサイトに似た洗練されたデザインで、従業員が業務の入口として直感的に使える優れたUI/UXを実現しています。社長のメッセージやお知らせなど、グループ共通のコンテンツは全従業員に表示される一方で、各社、各従業員の業務に応じて、コンテンツの出し分けがなされており、ユーザーは無意識に個々にとって必要な情報を得たり、業務アプリを使えたりする設計です。
例えば、各社によって異なるワークフローの承認ルートも、設定によって自社の階層やルールに則して流すことができます。今後、M&Aで子会社が増えても、設定を変えることで任意の様式に柔軟に変更可能であり、「そうしたイベントも織り込み、対処できる方法が構築時点で組み込まれていることは大きな優位性です」(並木氏)。
ワークフローで承認ボタンを押すと、給与計算システムに反映され、そのデータが他システムでも連携されるなど、周辺システム間のデータが連動しています。「今回のポータルで最も実装を要望していた機能。kintoneが他のシステムと連携性が高いメリットを最大限に活用できている」と、並木氏は評価しています。
また、今後について次のように話します。「クオリカはSIerとして幅広い技術やノウハウを持ち、私たちの期待を超えて優れた提案を行ってくれる貴重なベンダーです。他システムと連携するためのETLツールの実績やデータベース(DB)のノウハウも豊富で、実際にDBに関しては保守運用体制を組み、当社のシステムを支えてくれています。こうしてkintoneのみならず周辺の部分も含めてサポートしてもらうと同時に、業務が効率よく使いやすくなる機能についても、引き続き提案をお願いしたいと考えています」。
お客様のプロフィール
- 会社名
- UTグループ株式会社
- 所在地
- 東京都品川区東五反田一丁目11番15号 電波ビル6階
- 創業
- 1995年4月14日
- 資本金
- 6.8億円(2022年3月31日現在)
- 事業内容
- 製造、設計、開発、建設分野などへの派遣事業を展開。M&Aによりグループ会社を増やし、子会社数は10社に上る。製造派遣業界トップクラスの成長率を実現し、国内屈指の社員数を誇るリーディングカンパニー。