ホーム導入事例株式会社TSIホールディングス

ビーコンシステムで来店者と“デジタルな接点”を構築
リアルでも来店 ・ 行動履歴を把握し、OMO施策を実現

流通・サービス業

アパレル業 株式会社TSIホールディングス様

掲載日:2020年12月14日

導入ポイント

  • 課題
    ●実店舗への顧客の来店頻度を高める施策を打つ必要がある
    ●実店舗でも顧客と“デジタルな接点”を持ち、行動履歴を取得したい
  • 選定ポイント
    ●ビーコンを利用して来店データを管理できる先進性と実績を高く評価
    ●拡張性の高いクオリカのCRMシステムとの統合・運用が容易
  • 効果
    ●ビーコンによって来店時に自動ポイント付与されるサービスが実現
    ●来店頻度は年1.2回➡1.4回に増加し、行動データの活用も視野に

課題

店頭とECで購買を促進するオムニチャネル化を推進
来店者の店舗での動向を数値化し、把握することが急務

 アパレル大手のTSIホールディングスでは、店頭、ECの両方での購買促進を図るためのオムニチャネル化を推進する中、課題となっていたのが、実店舗の来店頻度を高めることと、店舗での顧客の行動データを取得することでした。業界を問わず、購買のEC化の流れは加速し、アパレル業界でも同様の動きがみられますが、リアル店舗では実際の商品に触れたり、試着したりしてから購入できる体験価値があり、それが強みともなっています。「来店して商品を体験してから購入し、その後ECでも買い足しや買い増しをしていただき、また体験するために来店いただく。こうしたカスタマージャーニーによる囲い込みによって自社顧客化を図るのが我々の戦略」と、コスメ商品が中心のブランド「Laline(ラリン)」を展開するグループ会社Laline JAPAN株式会社の山本直樹代表取締役社長は話します。
 ただし、戦略を推し進めるためには、個々の顧客における店頭とECの行動を把握、分析し、効果的な施策を個別に売っていく必要があります。「会員に関して、ECでは行動履歴を取得することが可能になっていますが、店頭についてはそうしたデータを取ることができていないのが問題でした。ECと同様に、店舗でも顧客とデジタルの接点を持ち、その動向を数値化することが不可欠だと考えたのです」(TSIホールディングス管 理本部IT戦略部ITプラットフォーム課 顧客接点システムチームの渡邉栄氏)。
 同社は既にクオリカの支援により、ECのログデータや実店舗のPOSデータを蓄積するDMP(デジタルマネジメントプラットフォーム)を構築しています。そのDMPを本格活用し、ワントゥワンのマーケティングを行うためにも、店頭でのデータ取得は急務でした。


左から
Laline JAPAN株式会社
代表取締役者社長 山本直樹 氏
経営管理部物流管理課 シニアマネージャー 安本成美 氏

選定

安定性と実績を持つ信頼できるビーコンシステムを導入
連携性に優れたクオリカのCRMへの組み込みに成功

 そこで、クオリカが提案したのが、Tangerine社のオフラインデータプラットフォーム「nearME」です。実店舗に来店を検知するためのTangerine社製ビーコンセンサを設置。ブランドの会員になっている顧客のスマートフォンアプリと連動しており、顧客が来店して30秒滞在すると、アプリに自動的にポイントを付与する仕組みになっています。個々の顧客ごとに、来店情報と滞在時間を正確に把握でき、クオリカのCRM統合プラットフォームのデータと連携することで、例えば、来店してどれくらい滞在し、何を買ったか、あるいは何も買わなかったといった詳細なデータが取得可能です。「Tangerine社のシステムは安定性が高く、数多くの実績もあり信頼できることから、導入することに決めた」と、渡邉氏は言います。
  加えてポイントとなったのが、クオリカのCRMシステムとの連携性です。クオリカのCRMシステムは拡張性が高く、様々なソフトやサービスとの連携が容易であることが特徴となっています。また、店頭での行動履歴は膨大なデータとなり、記録するための新たな仕組みも必要です。そのために、クオリカではトランザクションに特化したデータベースを組み込むなど的確に対応。「そうしたクオリカの柔軟なシステム、機能を実現するための開発力も、実装を決めた要因。複数社が関わる難しいプロジェクトでしたが、クオリカの調整力もあり、最終的には稼働に漕ぎつけることに成功したのです」(渡邉氏)。


左から
株式会社TSIホールディングス
管理本部IT戦略部 ITプラットフォーム課 顧客接点システムチーム
渡邉栄 氏、小川茉優 氏

導入と効果

ビーコンシステムで来店頻度と客単価がじわり増加
定期的に来店ポイントを数倍にして訪問を誘う

 TSIホールディングスが、第一弾として導入したのが、前出のコスメブランド「Laline」です。国内の32店舗に導入し、一斉に稼働を開始。従来、紙のポイントカードを活用してきましたが、導入後は来店時、スマホアプリに自動的に来店ポイントが付くようになっています。店員が丁寧に案内したこともあり、導入から2カ月で既に店舗を訪れる会員の45%が使用するまで普及しています。
 アプリへの自動ポイント付与は、来店する動機付けに一役買っており、会員一人当たりの年間平均来店回数は昨年の1.2回から1.4回に上昇。分析した結果、ポイント付与の設定をしている顧客の購買単価は、未設定の顧客より高いことも明らかになり、売り上げ増加に何らかの作用を及ぼしている可能性が読み取れます。
 Lalineは、グループのブランドの中でも積極的に新しいデジタルシステムの導入を進めており、ビーコンの他にも、各店舗の店員がウェブサイト上で顧客の質問にチャット形式でリアルタイムに応え、ECでの購入につなげる「ウェブ接客」もスタート。コロナ禍で一般的にECの利用が進む中、そのような新しい施策の効果もあり、非常事態宣言が発せられた時期のECの売り上げは前年比4倍にも上り、その後も2.5倍程度を維持するなど、好調を持続しています。
 さらに、店舗の売り上げはコロナ禍の当初は下がったものの、ビーコンによる集客も後押しして、今までと変わらない客足を取り戻しています。「新型コロナウイルスの前よりも、逆に顧客の数は増え、売り上げも伸びている。ビーコンによるポイント付与の楽しみが、来店頻度の向上につながっていることは確かだと思います。効果があることはわかったので、今後は定期的に来店ポイントを数倍にするなどの施策で半年に1回、つまり年2回は来店いただき、店に来ない間はECの利用を促すなど、リアルとECをつなげる仕掛けに取り組みたい」(山本社長)。
 TSIホールディングスでは第2弾として、アパレルのROSE BUD(ローズバッド)27店にも導入し、効果を見極めている状況です。

今後の展望

次のフェーズは蓄積された顧客の行動データの活用
ビーコンシステムと成功事例はグループ会社に横展開

 一方、集客に加え、もう一つの課題であった実店舗での顧客の行動データも蓄積が進みます。これからは集まったデータをどのように分析して活用していくかを検討する次のフェーズに移ります。
 「来店していただいた直後の関心の高い時期に、ECで販売している商品の案内を送ることもできます。あるいは、予想される使い切りの時期にECでの買い足しを促すことも可能。逆に、ECで「お気に入り」に登録した商品を、実店舗に来た時に勧めて使っていただくような接客も考えられます。このような実店舗、ECでの行動・購買履歴に基づいたパーソナルレコメンデーションの効果を一つ一つ検証し、成功事例は全店で共有していきたい」(山本社長)。
 また、ビーコンシステムは他のグループ会社にも横展開し、Lalineの成功事例を“移植”することも視野に入れています。こうして、ビーコンシステムを一つの武器としながら、グループ全体でOMO施策(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)に力を注ぎ、自社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に進めていく計画です。

お客様のプロフィール

会社名
株式会社TSIホールディングス
https://www.tsi-holdings.com/
所在地
東京都港区北青山1-2-3 青山ビル
設立
2011年6月1日
資本金
150億円
事業内容
株式会社東京スタイルと株式会社サンエー・インターナショナルの共同株式移転による 共同持株会社として、株式会社TSIホールディングスを設立。現在は約50ブランド、 国内約1000店舗を構え時代の流れを先取りする大手アパレル企業。