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現場の三次元マップを手軽に生成するシステムを導入
PC 上で現状をイメージでき、設計や作業準備に有効

共通ソリューション

道路保全管理業 株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング様

掲載日:2020年03月28日

導入ポイント

  • 課題
    ●平面図だけでは現場の状況をイメージするのが難しかった
    ●多くの部署の図面を頭の中で合成して、立体的に想定するのは困難
  • 選定ポイント
    ●人が背負って歩くだけで手軽に現場の三次元マップが作れること
  • 導入後の期待
    ●三次元マップによって現場のイメージが容易になり、設計が効率化
    ●作業機械の搬入シミュレーションや災害時の復旧にも役立つ

課題

高速道路の点検や維持補修を担うプロフェッショナル
課題は図面から現場をイメージするのが困難なこと

 ネクスコ東日本エンジニアリング(NEE)は、社会経済活動の基盤である高速道路の保全点検業務を担うプロフェッショナル集団です。高速道路の安心・安全を確保するため、橋梁やトンネルの構造物の点検や調査設計、あるいは道路照明やETC などの施設設備の点検、維持補修を着実に行うことが使命です。そうした構造物や施設設備は老朽化対応だけでなく、現代にあった技術やセキュリティを備えるようにアップデートが不可欠。
 業務を効率的かつ着実に行うために必要なのが、エンジニアなどの関係者が、点検や補修を行う現場の状況を予め把握して、設計し、実際の工事に臨むことです。従来は事前に図面によって現場の状況を確認し、それらの業務に当たっていました。しかし問題は、料金所が併設されているインターチェンジ(IC)などの現場には、NEE 内の土木、造園、電気、通信、機械、建築など異なる部署が様々な構造物や施設、設備を維持管理しており、図面が複数にわたること。複数の図面を見て頭の中で合成して現場をイメージする必要があります。図面の確認が一つでも欠ければ、実際にはある構造物を見落としてしまい、点検や工事に支障が出ることになりかねません。また、ICなどは通常の勤務地から遠く、現場に行って確認することは手間と時間を浪費します。「いかに正確かつ効率的に現場をイメージすることができるか。それが現場で働くエンジニアなど関係者の課題」と、NEE 施設事業本部の並木施設工事部長は話します。

    

解決策

建造物の三次元マップを生成する測定システムを導入
現場に行かずとも立体的なイメージが共有可能に

 NEE では現場の状況を見るため、以前、Google マップのストリートビューの画像を活用したこともあります。ただし、構造物で隠れた部分は確認できず、設備間の距離感も分からない点が問題でした。
 そこで、NEE はクオリカにソリューションの提案を打診。クオリカが提案した機器が、現場の建造物や設備を点群化し、三次元マップを生成するバックパック型の測定システム「LiBackpack C50」です。測定者がこの機器を背負い現場を歩くと、1 秒間に30 万発のレーザーの照射と360 度カメラによるカラー動画撮影が行われ、レーザーの反射によって建造物の形を点群データで収集すると共に、カメラの映像を使って色付けして、最終的に三次元マップを生成します。その三次元マップはパソコン上でマウスを操作して、上や斜めから俯瞰したり、様々な角度に動かして見たり、ズームしての細部の確認などを自由自在に行ことができます。「標準的なインターチェンジの施設であれば10~15 分程度歩くだけで手軽に三次元マップを得られ、非常に便利。この画像があれば、どこに何があるかを現場に行かずとも立体的にイメージでき、設計や工事機材搬入検討に役立ちます」(NEE 施設試験・測定課の面川勉課長代理)。
 三次元マップ生成機器は、他に車載型やドローン型、据え置き型などがありますが、車やドローンは地下や狭い空間に入れず、据え置き型は設置場所の確保が難しい場合があります。その点、人が背負うタイプは、屋内外を問わず様々な場所に入り込めるのがメリットです。

株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング
施設事業本部施設工事部長 並木正之 氏(中央)
テクニカル・トレーニングセンター副センター長 入澤昭治 氏(奥側)
テクニカル・トレーニングセンター施設試験・測定課課長代理 面川勉 氏(手前側)

期待される効果

高速道路の料金所を点群化・色付けし、正確に再現
新設備の設置や作業シミュレーションが容易に実現

 導入検討に当たって、当初は保全点検業務の技術研修を行うテクニカル・トレーニングセンターで、研修用に設置しているETC レーンを対象に、試験的に使用することからスタート。面川氏が「LiBackpack C50」を背負って歩行しながら測定し、テストケースとして生成した高速道路の料金所施設の三次元マップが【図1】です。点群化された建造物が色付けされ、正確に再現されていることが分かります。これを見れば、構造物の高さや設備の位置関係、距離も把握可能です。「新しい設備の設置を検討する際、平面的なスペースだけでなく、立体的に収まるかどうかも確認できるのが利点」と、面川氏は説明します。
 さらに、この三次元マップを見ることによって、どのような構造物があるかが分かり、例えば、「建築部門だけでなく、土木部門の図面も確認する必要がある」など、気付きを得られることもポイントです。
 一方、橋梁やトンネル、ETC や道路照明などを点検・補修する場合、必要な作業機械を現場に持ち込みますが、その機械をどのような経路で搬入するのがベストかシミュレーションを行う際にも、こうした三次元マップがあるとスムーズです。構造物間の幅だけでなく、平面の図面からは把握しにくい高さもイメージすることができるからです。アイコンをクリックするだけで、点群化された画像だけでなく、構造物の高低を色分けして表示することも可能。カメラで360 度撮影した動画も保存されているため、不明点や疑問点を実際のリアルな映像を見て確認することもできます。「ソフトウェアの多様な機能を使って、ニーズに応じた様々な使い方が可能」と、面川氏は話します。
 また、交通事故や地震・台風などの災害によって道路や施設が損傷した場合、現場で事後の三次元マップを生成し、パソコン上で事前の画像と重ねることによって、構造物や付帯工作物の損傷や変移を確かめるような使い方も想定できます。「三次元マップによって、これまで人の目に頼っていたことをデータでチェックできるようになれば、点検や補修も精度やスピード化が期待できます」(並木氏)。

                             【図1】三次元マップ

今後の展開

設計や作業で現調の手間を省き、簡便・効率に変革
道路の保全点検業務に限らず、多方面の業務に有効

 NEE では、検証のためのデータ収集を開始するとともに、データの収集管理方法について今後検討。
 将来的に、パソコン上で可能な限り最新の状況を確認できるように、定期的に測定して三次元マップを管理していく予定。「足を運んで現地調査をしなくても、現状を手元で確認できるようにして、少しでもエンジニアの負担を減らせればと思います。また、今後は多様なIT サービスや機器を持っているクオリカからの新たな提案を期待し、それらを連携させて現場の業務をより改善するツールに進化させていければと考えています」(並木氏)。
 NEE のような道路の保全点検を行う企業に限らず、平面な図面以外で現場の様子が確認できる三次元マップは、導入すれば重宝するツールです。それを手軽に生成できる「LiBackpack C50」は、建築関係、工事関係、施設運営関係などの企業にとって、作業の効率化、スピード化を進めるためのツールの一つになると言えるでしょう。
 NEE はこれからもIT を活用しながら、高速道路の安心・安全を守ります。

お客様のプロフィール

会社名
株式会社ネクスコ東日本エンジニアリング
所在地
東京都荒川区東日暮里5-7-18 コスモパークビル3 階
設立
1984(昭和59)年11 月
事業内容
高速道路の点検管理から、補修改良工事のための調査設計
地震・台風などで道路付属設備・建物が損傷を受けた場合の復旧
道路保全情報システムや施設管理システムの開発・改良と運用・管理、高速道路の保全管理技術の開発など。

お問い合わせ先:MA第二事業部
TEL:03-5937-0750
FAX:03-5937-0802