加工プロセスの可視化で改善判断を高度化
年間940時間削減を実現したスマート工場の取り組み

課題

さらなる生産性向上に向け、改善を次の段階へ
稼働・停止の可視化だけでは改善の“根拠”が不足

 スター精密株式会社は静岡県を拠点に、CNC自動旋盤を中心とした工作機械事業とプリンターなどの特機事業を展開するメーカーです。自動車や電子機器、医療機器の精密部品を加工するCNC自動旋盤では世界トップシェアを誇り、海外売上比率は約8割に上ります。総事業費100億円を投じ、CNC自動旋盤のコア部品を生産する新工場を建設し、2025年から稼働しています。自律走行ロボットによる夜間生産や太陽光パネル導入などを通じて、生産効率と環境性能の両立を図るスマート工場です。
 こうした高効率な生産体制を支える一方で、さらなる生産性向上に向けた改善の高度化が課題となっていました。
 新工場の建設にあたり、スター精密が重要なテーマとして掲げたのが、生産設備のDX(デジタルトランスフォーメーション)です。とりわけ、CNC自動旋盤のコア部品の品質を維持しながら、いかに生産性を高め、コスト削減を進めるか。同社ではこれまで、現場の知見を生かしながら改善を積み重ねてきました。しかし、さらなる高度化を目指す中で、経験だけでなくデータに基づく改善判断が求められるようになっていました。
 同社は10年以上前から生産設備の稼働状況を把握する仕組みを構築し、活用していました。ただ、同社機械事業部生産技術室の橋爪優太氏は「次の改善につなげるには、得られる情報に限界がありました」と振り返ります。従来の仕組みで把握できるのは主に稼働・停止の記録で、稼働中に設備内部で何が起きているのか、加工状態の変化までは把握できていませんでした。改善の根拠となる情報を十分に得ることができず、生産性向上の取り組みを次の段階へ進めるうえで課題が残っていました。

(右から)
スター精密株式会社 
機械事業部 製造部 生産技術室 室長 木村友亮氏
生産技術グループ 橋爪優太氏
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(右から)
スター精密株式会社 
機械事業部 製造部 生産技術室 室長 木村友亮氏
生産技術グループ 橋爪優太氏

選定

「加工中に何が起きているか」が見え、
そのデータを“改善の根拠”に変える豊富なアプリ群

 こうした課題を受け、同社は新工場において、稼働状況の可視化にとどまらず、データを活用し、継続的な改善活動につなげることを目指しました。橋爪氏は「意味のある見える化、つまり改善に使えるデータを得て、活用していくことが重要でした」と話します。そのため同社は、生産設備のデータ活用に向けた複数のシステムを比較・検討しました。
 その結果、「この仕組みなら前進できる」と可能性を見いだしたのがKOM-MICS(コムミクス)です。KOM-MICSは、設備の稼働・停止の把握にとどまらず、加工プロセスそのものをデータで捉え、改善判断の“根拠”を提供できる点に特長があります。
 同社機械事業部生産技術室の木村友亮室長は選定理由をこう語ります。「一般的な稼働監視ツールは、『動いている/止まっている』という情報が中心になりがちです。一方、KOM-MICSでは、部品加工時のモーター負荷、いわゆる切削抵抗をリアルタイムで記録できます。どの加工プログラムで、どの程度の負荷がかかっているのかが分かる点が、『設備の内部で何が起きているかを知りたい』という私たちのニーズに合致していました。」
 さらに、決め手となったのが、設備の稼働状況の可視化を超え、KOM-MICSが改善活動につながる“提案”を行う機能も備えている点です。「前述の切削抵抗にとどまらず、稼働状況の表示、生産計画の向上、工具費の削減、電力使用量の削減などのヒントになる数多くのアプリが標準搭載されています。アプリの追加開発が必要なツールとは異なり、設備に接続した段階からアプリを活用でき、改善活動にすぐ着手できる点も評価しました。KOM-MICSよりも安価なツールはあります。しかし、その機能の充実度と改善判断の根拠を得られる点を評価し、KOM-MICSの導入を決めました」(橋爪氏)。

稼働監視システムを搭載した加工機
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稼働監視システムを搭載した加工機

導入と成果

切削抵抗の可視化で“確証”を持ち、加工時間を短縮
設備の8割、54機に接続しスマート化を推進

 新工場への本格導入に先立ち、効果を見極めるため、同社は既存工場の設備にKOM-MICSを接続し、改善活動に資するかを検証しました。まず部品の荒加工を行う3台のNC工作機械で、加工条件の見直しに取り組みました。加工は一般的に、削る速度を上げれば時間短縮につながります。ただし、速度を上げると切削抵抗(負荷)が増え、限界を超えると不良や工具損傷のリスクが高まります。そのため、品質を重視する現場では、十分な根拠がなければ条件変更の判断は容易ではありません。
 KOM-MICSでは切削抵抗が可視化されるため、負荷の状態を見ながら、適切な範囲での条件変更が可能になります。同社は「切削抵抗一定化」機能を活用し、切削力が低い区間の条件を引き上げる(=削る速度を上げる)ことで加工時間を短縮できることを確認。1年にわたるNC工作機械3台での検証により、合計940時間に及ぶ加工時間の削減を達成しました。
 工具選定にもKOM-MICSを活用しています。橋爪氏は「従来、現場では経験をもとに工具を選定していましたが、KOM-MICSで新旧工具を比較することで、同じ負荷でも新しい工具の方が切削速度を上げられることがわかりました」と話します。その結果、工具の見直しにより、年間約20万円のコスト削減効果が見込めることが分かりました。
 こうした検証を通じて改善の手応えを得た同社は、新工場で稼働する設備の約8割にあたる計54機にKOM-MICSを導入しました。メーカーの異なる多様な工作機械に接続し、設備の稼働状態を一覧で示す「あんどん表示」を活用。スマート工場の運用を支えています。
 一方、稼働開始までには調整が必要な場面もありました。プロジェクト途中で体制変更があった中でも、クオリカが月1回の定例会や電話による迅速な対応を行い、導入を支援したといいます。橋爪氏は「伴走する形で相談できたことが、円滑な導入につながりました」と話します。

スマートファクトリー可視化システム、あんどん図
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スマートファクトリー可視化システム、あんどん図

今後の展開

切削抵抗一定化を横展開し電力量削減にも拡大
自社製品と組み合わせ、次世代設備として提案へ

 新工場の稼働後、同社が注力するのは、成果が確認できた「切削抵抗一定化」による改善活動を他設備へ横展開していくことです。併せて、切削速度の最適な閾値を検証し、設備・工具ごとに最適な条件を見出すことで、工場全体の生産性向上を目指します。
 また、生産性向上と並行して電力量削減にも取り組んでいます。検証の3台のNC工作機械には、KOM-MICSのオプションとして電力センサーを接続。切削時間短縮の結果、年間1,080kWhの削減効果を確認しました。改善の横展開を通じて電力使用量の抑制を進め、CO₂削減につなげることで、サステナブルな工場運営にも貢献していく考えです。
 同社では次の展開も視野に入れています。自社製のCNC自動旋盤で精密部品を生産するグループ会社「ミクロ札幌」の工場へのKOM-MICS導入を進め、将来的にはその取り組みをモデル化。自社の工作機械とKOM-MICSを組み合わせた次世代のスマート生産設備として顧客に提案し、改善活動を支援する構想も描いています。木村氏は「当社が強みとするアフターサービスの強化にもつながり、新たなビジネスとして大きな可能性を感じています」と話します。
 こうした国内およびグループ内での取り組みを基盤として、今後、国内工場で得られた改善ノウハウを海外拠点へと広げていくことも視野に入れています。現在、タイや中国に構える生産拠点からも関心が寄せられており、現地での生産性向上や内製化の促進に向け、データ活用の可能性を検討しています。国内で実証した改善手法を段階的にグローバルへ展開することで、グループ全体の競争力強化につなげていく考えです。

導入を担当したクオリカ社員と一緒に
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導入を担当したクオリカ社員と一緒に

お客様情報

会社名

スター精密株式会社

所在地

静岡県静岡市駿河区中吉田20番10号

創立

1950年7月1日

資本金

252億2千1百万円

事業内容

CNC自動旋盤などの工作機械や小型プリンターなどの特機を開発・生産・販売。工作機械は自動車やデジタル機器、医療機器の小型部品の精密加工に優れ、世界に販路を持つ。従業員552人(2026年4月13日時点)。

サービス・ソリューション

工場の生産性改善システム
工場の生産性改善システム
KOM-MICS
工場内の生産設備からリアルタイムデータを収集し、稼働状況の可視化はもとより、生産性向上まで支援するIoTシステムです。

KOM-MICS
工場内の生産設備からリアルタイムデータを収集し、稼働状況の可視化はもとより、生産性向上まで支援するIoTシステムです。

掲載日:2026年5月18日