ホーム導入事例東神電工株式会社

「ATOMS QUBE」を海外進出で設立したタイ現地工場に導入
クラウドサービスを活用し、現地工場と国内拠点が連携して生産管理を実現
過不足のない安全在庫が可能になり、資材所要量の適正化を達成

製造業

電線商社 東神電工株式会社様

掲載日:2017年03月16日

導入ポイント

  • 課題
    ・タイに新設した工場で、極細線ハーネスの生産に必要な電線を適正に管理することが困難
    ・従来も別工場で資材所要量の管理が徹底されていなかったために、電線の過不足が発生したことが
     あった
    ・表計算ソフトによる管理では入力や計算の人為的なミスが生じるリスクがある
  • 目標
    ・資材所要量の適切な管理を含めた生産管理を実現する十分な機能を持つシステムの導入
    ・将来的に工場の従業員は200人規模になる計画で、その規模感にあったシステムの選定
    ・初期費用を抑制でき、稼働後のランニングコストも許容範囲に収まること
  • 成果
    ・在庫の閾値を下回ると自動的にアラートが表示される機能により、資材所要量の適正管理が実現
    ・クラウドサービスによって、日本の拠点とタイの工場が同じ画面を見ながら、受発注の相談や調整、
     承認、資材所要量のダブルチェックが可能に
    ・ATOMS QUBEに計上されるデータを元に生産管理の状況を報告する「月次レポート」を経営陣が
     閲覧し、事業戦略立案に活用

導入企業の概要

主要カメラメーカーが高く評価する極細線
「チャイナプラスワン」でタイに工場進出

 東神電工株式会社様(以下、東神電工)は、60年超の歴史と実績がある電線商社です。通信放送ケーブルや光ファイバーケーブル、AV関連機器などさまざまな電線やケーブル、電子部品を販売。直近20年は単に商社として電線を販売するだけでなく、電線の特殊ケーブル加工、電源供給や信号通信用の複数の電線を束にしたワイヤーハーネスなど、加工に特化した事業も進めています。さらに、デジタルカメラや一眼レフカメラ、ミラーレスカメラなどの内部配線に使われる極細リード線の端末加工も推進し、多くの主要カメラメーカーに販売。「カメラの小型化、高機能化に不可欠な部品として、取引先からは高く評価され、競合他社と差別化を図れる戦略的な製品。また、多品種小ロット対応が可能で、品質に厳格なカメラメーカーと長年取引して磨いてきた経験から、高精度でコストメリットがある電線や電子部品を提案できることも強み」と、取締役の島田正幸氏は話します。

 同社は1994年に香港に拠点を作り、現地の委託工場で生産した電線やケーブルを中国に進出した日系メーカーと直接取引する事業をスタート。そして、チャイナプラスワンの観点から、2012年にタイ東北部のナワナコン第2工業団地に現地法人を設立し、海外工場の建設に着手しました。しかし、11年にタイで大洪水が発生し、多くの工業団地が冠水した後、その復旧の過程で建築資材や人手の不足が生じ、工事が大幅に遅延してしまいます。完成を待ちきれず、13年には仮工場で生産を立ち上げ、現地の従業員のトレーニングも開始。14年に本工場が落成し、ようやく正式に生産がスタートしたのです。

 タイ工場で主に生産するのは、極細線ハーネスです。これは、直径0.08mm以下の極細線に米粒サイズの3mmの金属製端子を圧着させて樹脂製のコネクタに端子を挿入した電子部品。この製品を武器に、稼働後は電機、精密、光学分野の既存顧客に加えて、タイ進出後に新たに取引を始めた日系企業も増え、現地工場の売上高は14年の約3840万円から、16年には約8000万円と倍以上に増え、従業員数も60人から80人に増員されています。

TOSHIN TECHNOLOGY(THAILAND)CO.,LTD
極細線ハーネスを生産している様子

ATOMS QUBE導入の経緯

数百種×10色の資材を過不足なく管理したい
規模感、コスト、機能面のマッチが決め手に

 タイ工場では、極細線ハーネスの生産に必要な電線などの資材を、日本の拠点を通じて輸入し、調達しています。しかし、これらの電線を適正に管理することは意外に難しいのです。電線は1ロットが200mや300mなどと非常に長いにも関わらず、多品種小ロット対応の中で、1回の注文で生産の際に使う電線の長さが僅か数m~10mであることも珍しくないのが実情。電線は、中の単線の本数や太さ、被覆ゴムの厚さ、柔らかさなどの違いでその種類は数百種に及び、さらに基本的に1種類につき10色あるため、在庫に回される資材の数や量は膨大になります。入力や計算の人為的なミスによって、資材の過不足が生じるといった問題も起こり得るわけです。実際、東神電工では、従来はパソコンの表計算ソフトでの管理に頼っていましたが、資材が不足したり、逆に在庫があるのに発注してしまったりする問題が、何度も発生していました。

東神電工株式会社 取締役 島田正幸様(右)
経理兼通訳担当のインタミー・スパーポーン様(左)

 その問題を解決するため、タイ工場では受注出荷管理や生産計画、資材所要量計画など生産管理業務に求められる機能を搭載したシステムの導入を検討。複数のシステム会社から見積書の提供を受け、社内で議論を重ねました。「初期費用が高い大手のシステムに比べて、ATOMS QUBEは初期費用が抑えられているのが魅力でした。工場は将来的に従業員数を約200人に増やす計画ですが、その規模感にもマッチ。数百種類の資材の管理も容易で、資材所要量計算や在庫管理に関しても満足できる十分な機能が揃っていました。コスト面と機能面でまさに私たちが求めているシステムだと判断し、導入を決めました」(島田氏)

 しかし、導入を進めようとした矢先、タイでクーデーターが勃発。工場は稼働直後という事情もあって混乱に陥り、ATOMS QUBEを業務プロセスに組み入れるためのルール作りが、現地では困難な状況でした。そこで、島田氏とクオリカの担当者が話し合い、打開策として考案したのが、日本の拠点でルール作りを代行することです。日本の拠点で導入プロジェクトの専任の責任者を任命し、クオリカの支援を受けながら、ATOMS QUBEを使った業務プロセスを作成。でき上がったルールをクラウドサービスで現地と共有し、その後にクオリカの担当者が現地に赴き、タイ人従業員の教育を行うという二段構えの方法に切り替えたのです。その結果、一時期滞っていた導入作業が進展し、タイ工場では15年1月から、ATOMS QUBEが稼働し始めました。

導入後の成果

在庫の閾値を超えると自動的にアラートを表示
クラウドの画面を現地と日本でダブルチェック

 ATOMS QUBE導入後の大きな成果は、狙い通りに資材所要量の適正化が図れていることです。同社では、電線などの管理のために閾値を設定。電線は使用した長さを逐一入力し、それぞれの電線の在庫が残り数十mになるなど一定の閾値を下回るとシステムが自動計算して、「何をいつまでに何個買う」といったアラート情報が表示されます。その情報を元に、現地のタイ人の在庫管理専任者が日本の拠点に発注を申請。資材が過不足なく調達できる体制が構築されています。

 システムを使う上での疑問点や不明点は、現地の在庫管理専任者が、業務プロセスのルールを作った日本の拠点の導入プロジェクト専任者にメールや電話で質問。クラウドサービス上で同じインターフェースを見ながら話し合えるため、やり取りもスムーズです。日本の拠点には日本語が話せるタイ人スタッフが常駐しているため、その通訳を介して意思疎通も図れます。もちろん、導入プロジェクト専任者が答えられない質問はクオリカの担当者がフォロー。ATOMS QUBE上に積み上がっていく資材所要量などの数値に関しては、現地と日本の拠点でダブルチェックができるため、問題の発生を事前に把握しやすいことも利点です。

 「タイの工場と日本の拠点が同じ画面、同じ数値を見て、スカイプで通話しながら資材を発注しています。安全在庫が確保できているか、ダブルチェックができて見落としがなくなることがメリット。突然顧客から発注を受けた時も、画面を見ながら相談し、即座に承認を得ることができます。仕事の速さ、正確さが増して、非常に満足」と、タイの工場長を務める三澤成行氏は評価しています。以前、表計算ソフトで生産管理を行っていた時は、2週間に1回程度しか、在庫や売上高を確認できなかったそうですが、ATOMS QUBEではそれをリアルタイムで毎日追うことができるため、生産計画も立てやすくなったと言います。

左から
 TOSHIN TECHNOLOGY(THAILAND)CO.,LTD.
 OPERATING MANAGER部門 SUCHART KHIENKOKKRUAD様
 STORE部門 NANTHIRA SASOM様
 PURCHASE部門 NICHADA TAOSUNGNOEN様
 タイ工場長 三澤成行様

今後の展開

閾値の見直しや経営戦略に役立つ月次レポート
海外で頼りになるクオリカの柔軟なサポート力

 クオリカでは、ATOMS QUBEに計上される数値データを元に、売上高や資材管理、在庫管理、生産管理の状況を分析して報告する「月次レポート」を、15年1月から月1回配信しています。月次レポートは、在庫の回転率が悪い資材を探索したり、閾値を見直したりすることなどに活用できるほか、経営会議で今後の事業戦略を練る際の指標としても有効です。東神電工でも、毎月経営陣が閲覧して現状を共有し、事業戦略を検討する際の資料として利用しているようです。クオリカでは、「こうした指標も欲しい」などのユーザーの声をもとに、月次レポートをさらにブラッシュアップしていく予定です。

 一方、東神電工ではATOMS QUBEの全ての機能を使い切れていないと感じています。まずは受注管理や資材所要量計画、生産計画で活用していますが、今後は儲けが出ているかどうかを判断するために原価管理の機能も積極的に使っていく予定。加えて、将来的には財務管理や品質管理もシームレスな連携によって実現することを望んでいます。

 ATOMS QUBEを導入して、資材所要量の過不足問題を解消した東神電工。「日本の拠点でシステムの雛形を作るという選択をしなければ、導入の成功はなかったかもしれません。システムのコストと機能面での満足度もさることながら、そうした計画の変更に即座に対応し、現地工場に何度も訪問したクオリカのサポート力の高さも、導入成功の要因」と話す島田氏。パッケージとしての完成度の高さに加え、海外での想定外の事態にも対応できる柔軟な支援もATOMS QUBEを導入するメリットと言えるでしょう。

左から
 東神電工株式会社
  取締役 島田 正幸様
  インタミー・スパーポーン様
 クオリカ株式会社
  ITサービス事業本部 製造サービス事業部 製造サービス第一部 主査 竹内和也
  ITサービス事業本部 製造サービス事業部 営業部 主任 別府 和俊

お客様のプロフィール

会社名
東神電工株式会社
所在地
神奈川県川崎市中原区丸子通2-447
設立
1955年9月15日
代表取締役
榎本 猛
事業内容
各種電線、ケーブル、電子部品の販売、
極細線の加工・販売
会社名
TOSHIN TECHNOLOGY (THAILAND) CO.,LTD
所在地
999/13、Nava Nakorn Industrial Estate(Nakornratchasima)
M. 1,T. Naklang,Soongnuen,Nakorn Rachasima 30380 Thailand
設立
2012年9月

サービス・ソリューション